ブラジル和歌山県人会(谷口ジョゼー眞一郎会長)は、『和歌山県人ブラジル移住100周年記念式典』を29日、サンパウロ州議会で開催した。母県の仁坂吉伸知事や尾崎太郎議会議長をはじめ、メキシコ、ペルー、アルゼンチンの同県人会から20人以上の慶祝団が駆けつけ、およそ400人の関係者が盛大に節目の年を祝った。
1916年に同県人の先駆けとして中井繁次郎さんが移住して以来、戦前戦後併せて約1600世帯6千人を送り出してきた同県。同会は54年に創立され、近年では県連主催日本祭で一番の集客力を誇るなど、目を見張る活動を行ってきた。
同日午前9時、フランコ・モントーロ講堂にて浄土宗日伯寺稲場ペドロ導師により先没者慰霊法要がしめやかに執り行われた。出席者は献花に列を成し、先人の遺徳を偲んだ。その後、本会議場へ移動。サンパウロ州軍警楽隊の演奏により日伯両国歌が斉唱されると、式典は始まりを告げた。
今式典は、同県出身の母を持つ羽藤譲二サンパウロ州議の発議により実現。病床に臥している同州議に代わり飯星ワルテル連邦下議が議長を務めた。
挨拶に立った谷口会長は、先駆者の歩んできた道程に思いを馳せ、「県人移住者の中には偉大な人物もいた」として、戦後移住者受入のため植民地開拓に尽力した松原安太郎や初代会長の竹中儀助の功績を紹介。
一方、世代交代や混血化の進む時代の趨勢に目を移し、「せめて日本文化と伝統だけは守っていかなければ。和歌山県人会子弟の我らもこれから先も力を合わせ、出来る限り努力していきたい」と誓いを立てた。
仁坂知事は「勤勉さとたゆまぬ努力で信頼を勝ち取り、今日の日系社会の繁栄を築いてこられた」として同県系人を称賛した。
その上で、「皆様が多くの苦難を乗越え今日の生活を築かれているように、故郷和歌山県も皆様の同胞が沢山の困難を乗越え、元気に今日の和歌山を作っています」として、21年の国民文化祭などを例に挙げ、同県の取組みを紹介。尾崎議長も「皆様が母県と呼べるに相応しい県を作ってゆく」と語ると、拍手喝采となった。
そのほか、野口泰在聖総領事、公益財団法人和歌山県国際交流協会、和歌山県中南米交流協会、わかやま南北アメリカ協会、メキシコ、ペルー、アルゼンチン三ヵ国の同県人会の代表者らから祝辞が相次いだ。
表彰式では、百歳長寿者では奥山育子さん、高齢者では下本八郎元サンパウロ州議が代表し97人が表彰された。功労者では木原好規、辻誠也両元会長、高名移住者では故松原安太郎さん、故竹中義介さん、百周年移住者では故中井繁次郎さん、故木下萬治郎さんが称えられた。
その後、谷口会長と来賓者の間で、記念品や寄付金の贈呈が行なわれ、和歌山県琴美会による大正琴の優美な演奏で、式典は幕を閉じた。
引き続き、同議会内食堂に場所を移し、昼食会を開催。ケーキカット、鏡開きで節目を祝うと会場は熱気を帯び、その後、参加者らは歓談に興じた。
竹中初代会長の孫娘・ムツさん(74)は、「小さい頃のことではっきりした記憶はないですが、勤勉で実直な人だったよう。祖父も喜んでいるわ」と喜んだ。53年の和歌山大洪水で被災者救援策として県人移民受入に尽力した祖父・儀助さんに思いを馳せ、「今では想像もつかない困難な時代だったんでしょう」と感慨深げに語った。