かつて所属した名門を助けに帰国してみたら、いつのまにか代表復帰まで望まれる存在になっていた。それほどまでに今年のエルナネス(32)の活躍には目を見張るものがある。
エルナネスは2013年のコンフェデ杯、14年のW杯でもブラジル代表準として出場した実績を持っている。
持ち味は試合の状況にあわせて中盤のどのポジションもこなせる器用さだ。
当時のブラジル代表ではボランチとして、チームの守備を固めていた。そうかと思えば、所属のラツィオ(イタリア)ではむしろ攻撃の中心で、年間10得点を超えることも珍しくなかった。
W杯を終え、30歳を迎えた頃にはイタリア屈指の強豪のユベントスで渋い脇役的なプレーで貢献した後、2017年は中国リーグに移籍と、「選手人生も余生か」とのイメージも持たれていた。
だが今年7月、そんなエルナネスのサッカー人生が急転直下を迎えた。大不振に喘ぐ古巣のサンパウロFCから、「窮状を助けてほしい」とレンタル移籍のオファーがあったのだ。
サンパウロFCは、エルナネスがその名を世に知らしめた重要なチームだ。同チームは2006~08年に全国選手権3連覇を飾っているが、その中心選手こそが彼であり、08年には年間最優秀選手にまで選ばれている。
低迷していたサンパウロにおいてのエルナネスは、ゲームメイクのみならず、ストライカーとしてもチームを支え、チームは順位を少しずつあげていった。
そして11月6日現在、エルナネスは全32節のうち、半分の16節の出場ながら、リーグ全体7位となる9得点を記録。チームの順位も、18~19位だったところが、今や9位。残り6試合で、南米一を決める来年のリベルタドーレス杯出場権獲得圏内(リーグ7位まで)に勝ち点差4まで迫り、「チームに新しい目標ができた」と言わしめるまでになった。
そんなタイミングで、メディアやファンもエルナネスの存在に注目しはじめた。評論家のメノン氏は、これまでの成績を数字で示しただけでなく、「しかも、得点は主に強いチームを相手にするときにあげている」と主張。さらに、同じ守備位置の国内選手で、しばしばセレソンにも召集されているルーカス・リマ(サントス)やジエゴ(フラメンゴ)より「現状では上」として、セレソン復帰を待望した。
また、エルナネスのサンパウロでのポジションであるインサイド・ハーフは、現在のブラジル代表の数少ない泣き所でもある。ほかのポジションは欧州強豪のチーム所属選手で埋めることができているのに、左のインサイド・ハーフだけは中国の北京国安のレナト・アウグストがつとめている。彼の控えも地味で、これまでジュリアーノ(トルコ・フェネルバフチェ)やタイソン(ウクライナ・シャフタル・ドネツク)、あるいは先述の国内組がこれまで召集されていた。
最近では、レナト・アウグストの存在感が希薄なため、「エルナネスの方がレナト・アウグストよりも上」という意見も出始め、遂にはグローボ局の名物サッカー・アナウンサー、ガルヴォン・ブエノまでもがエルナネス・セレソン待望論を唱え始めた。
そうした状況もあり、セレソンのチッチ監督は11月に入り、サンパウロ側に「今後、エルナネスを召集するかもしれない」との通達を出したという。
サンパウロにはこれはラッキーだった。エルナネスは10月に発表された、11月の日本とイングランドの親善試合には呼ばれなかったが、その間に全国選手権では3試合が予定されていて、そこにエルナネスを取られては、再度、2部降格を心配しなくてはならなかくなる。そこで召集されずに、今年のシーズンが終わったあと、来年の3月に召集されるのであれば、貢献者のエルナネスを喜んで送り出せ、チームのアピールにもなるからだ。
古巣の降格危機での帰国から、エルナネスのサッカー人生は、チームの浮上から、自身の代表復帰の声もでるなど、予想もしなかった方向に動き始めている。(10月29日付UOLエスポルテなどより)
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