【既報関連】ミシェル・テメル大統領(民主運動党・PMDB)が6日に、年金制度改革を含む社会保障制度改革(以下「年金改革」)成立への悲観的な見通しを表明し、それを報道各社が「大統領が年金改革に白旗か」と大々的に流したことで、翌7日の株式市場は大きく値を下げた。それに危機感を覚えたテメル大統領以下、エンリケ・メイレレス財相ら主要閣僚は火消しに躍起になったと、7日付現地各紙が報じた。
政府内で、大統領よりも年金改革成立に強い意欲を見せるメイレレス財相は、「(6日のテメル発言は)厳しい現実を認めたに過ぎない。達成のために議論を尽くし、採決まで持ち込む方針にブレはない」とした。
サンパウロ市株式市場指数(Ibovespa)は7日、ペトロブラスやブラジル銀行など、公社株を中心に値を下げ、1日で2・55%ダウンを記録。7万2414・87ポイントと、およそ2カ月ぶりの水準に落ち込んだ。為替レートも反応し、7日は商用ドルが対レアルで0・52%上昇し、1レアル=3・2777ドルで引けた。
投資顧問会社、グランプリ・アセット社のヴラジミル・ピント氏は、「6日の大統領の発言は『もう、この政権からは良い知らせはないだろう』と解釈されてしまった」と語る。
テメル大統領も「政府は既に、年金改革案を議会に提出している。私の全ての力を年金改革の成立に注ぎ込むことを改めてお伝えしたい」と力説する動画をネットで配信した。
6日の発言には、年金改革を成立させる責任の半分は議会側、特にロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)にあるとなすり付けようとする、大統領府側の思惑が働いているとも一部で報じられている。
マイア議長は6日のテメル発言を、(周りが騒ぐほど)弱気を見せたとは思っておらず、「年金改革は成立させなくてはいけない。ただそのためには政府の助けも必要」と返している。
7日にテメル大統領は上院議員たちと会合を持った。そこでは、年金改革案をより緩やかなものにして、議会に提出しなおすべき、5月に委員会に提出されたままの案では承認のチャンスはないというのが大半の認識だった。
PMDB上院リーダーのライムンド・リラ上議は会合後に、「受給開始最低年齢(男性は65歳、女性は62歳)だけは通したい。その他は次の政府に」というミニ修正案を大統領が語っていたと明らかにした。
一方、上議たちの間には早くも、「年金改革案が年内に下院を通過しても、上院で審議、採決できるのは来年3月から。そうなると総選挙直前期に国民受けの悪い法案に賛成するのは辛い」との悲観論も出ている。