静岡県立三島北高校(齊藤浩幸校長)は、国際交流部(顧問稲葉亜矢子教諭、脇田実季(みき)部長)として同大会に2チーム出場した。
初めて部活動の様子を見に行った9月は、まだ出場チームも決定しておらず、資料を探しながら肯定否定の柱となるアドバンテージとディスアドバンテージを決めている途中だった。
副部長の杉山悠聖(ゆうせい)さん(2年生)は、テーマに対する最初の印象について、「個人的には賛成で、移民が増えれば国内がグローバルになり、英語がもっと使えるようになるくらいのイメージでした、調べていくうちにそんなに簡単なことではないと知りました」と話した。
部内の各チームで出された肯定側のアドバンテージとしては、「GDPが上がり経済が良くなる」「研修員制度が廃止されて人権が守られる」「社会保障の負担が減る」など。否定側のディスアドバンテージとしては「外国人に雇用が奪われる」「移民の子供たちの教育環境の悪化」などが挙げられていた。
同校では授業などで一人一人使えるタブレット端末があり、証拠を探すのはほとんどがインターネットだ。
試合では証拠の出どころも重要なポイントになる。脇田部長によれば「インターネットのデータがすべて使えるわけではありません。内閣府のPDFなど信頼できる資料を探します。より新しいものがいいですが、自分たちの意見を支えるちょうどいい資料を探すのは難しいです」とのこと。
英語が堪能で、スピーチも英語で作ってから日本語訳するという渡邉了英(りょうえい)さん(2年生)は、テーマを聞いた時、「いい切り口だなと思いました。少子高齢化社会の働き手として必要だと思う」と感じたという。
指導にあたる副顧問の中島由美教諭によると、「アドバンテージもディスアドバンテージも、資料を見つけやすい経済に関係するものに偏る傾向がある」とのこと。
「資料をそのまま訳しているとすごく難解な単語が出てくるが、いかにわかりやすい英語で伝えるかが重要。英語の(発音の)うまさはあまり関係ない」と英語ディベートのポイントを解説した。
同部では、資料探しや練習試合のほかにも、普段から、出されたテーマについて短時間でアドバンテージとディスアドバンテージを立て1対1で意見を言い合う練習も行っている。
1年生の嶌田花耶(しまだ・かや)さんは、「英語が苦手でこの部活に入りました。最初は自分の意見を考えることすら難しく、言いたいことが言えなかったけれど、だんだん英語でも日本語でも短く自分の意見を言うことが楽になりました」とディベート練習の成果を話した。
県大会に出場する2チームのメンバーは県大会の約1か月前に発表され、10月半ばには実際の試合形式の練習が行われていた。
試合が行われる間、他の部員はスピーチの内容をフローシートと呼ばれる所定の用紙に書きとっていく。メンバーでなくてもまったく気が抜けない。
しかし、原稿が完成している立論のスピーチは流暢だが、その後のスピーチは話す速度や質疑応答のやり取りが遅くなる。
相手の隙をつくべき質問も、スピーチの確認や、出された証拠とテーマの関係の強さを質問するような形式的なものに。
英語で言えないというもどかしさと、どこを突いたらいいのかという判断や、相手の発言を利用して自分たちの理論を強める技術の難しさが浮き彫りになる。
両サイド共に「だから移民政策を緩和するべきだ/するべきではない」という最初の主張の勢いを、「その後のスピーチ」の部分では失ったように感じた。(つづく、秋山郁美通信員)