10月29日の試合当日、三島北高校Aチームは1回戦目、肯定側として加藤学園暁秀(ぎょうしゅう)高校チームと対戦し、「中小企業で働く人が増え日本経済が盛り上がる」「研修制度がなくなり労働環境全体がよくなる」というアドバンテージを挙げた。
一方の暁秀チームは「日本人は外国人に否定的な印象を持っているから良い結果にならない」「治安が悪化する」というディスアドバンテージを挙げた。
沼津市にある私立加藤学園暁秀高校にはバイリンガルコースがあり、授業のほとんどを英語で行っている。そのため英語の発音はネイティブ。場に応じた質問や返答に困ることはほとんどなかった。
緊張感が伝わる試合が終わると、結果を待つ間、笑顔で記念写真を撮ったり、お互いの学校の話を聞くなど交流し和やかな雰囲気になる。
会場では常に8部屋で同時に試合が行われる。それが4回繰り返される。
立論は肯定側も否定側も1パターンずつだが、相手によって反駁が違うため、2度3度同じサイドで戦っても、同じ議論の流れにはならない。
試合後の休憩は短いが、相手からの質問や反論でうまく返せなかったところや、審判からのアドバイスを参考にして次の試合のための準備をする。
台風のため短くなった昼休み中にも、弁当を食べながら、スマートフォンで足りなかった証拠を探したり、対戦相手の前の試合の情報を交換したりする姿が見られた。
どのチームも最初の主張をする立論は、完成させた原稿を読むため4分の制限時間いっぱい早口でまくし立てる。制限時間前に読み終わっても、「もう一度主張を繰り返します」と、制限時間が来るまで重要なポイントをアピールし続ける。
以降のスピーカーは流れによってその場で原稿を作る。スピーカー以外のメンバーも、相手のスピーチを聞いて反撃の質問を作ったり、話しているスピーカーに必要な証拠を選んだりするため、常に辞書や資料を調べたり、メモを書いた付箋をやりとりしている。
もちろん、相手のスピーチが聞き取れず質疑応答時間に証拠の確認をしたり、質問に対してうまく答えられずに議論が滞ることもある。
三島北高校国際交流部の準備段階で否定側のディスアドバンテージの候補になっていた「移民の子供の教育」という論拠は、「日本で教育を十分に受けられないことにより、移民の子供たちの教育を受ける権利が侵害される」という表現で、同校Bチームが実際に試合で用いていた。
部内の紅白試合では深まりが足りなかった質問や反駁の時間には、将来的にAI(人工知能)に取って代わられる職業のために労働者は必要ないのではないか、日本語を話す必要がなくなるのではないか、という観点まで及び白熱した。
各チーム4試合を戦った結果、決勝を行わずに暁秀高校の優勝が決まった。準優勝は、4戦中暁秀高校にだけ破れた三島北高校Bチームとなった。(つづく、秋山郁美通信員)