連警職員がモーターボートに乗り込む。ブラジルとパラグアイを隔てるパラナ川の密輸パトロールに出るため
だ。離れたところから眺めていた少年2人が、携帯電話で連絡を取っている。2人は密輸団とグルで、情報
を受けた密輸団は、その日はもう、パラナ川に出ない。
パラナ川沿いのパラナ州グアイラ市に、フォス・ド・イグアス市連警の水上基地が建設されたことで、監視は
厳しくなったが、密輸団はパラグアイ側に秘密の港を作ったり、連警職員を監視したりして、監視の目をかい
くぐっている。
13日付現地紙によると、ブラジル南部パラナ州と隣国パラグアイの間で暗躍する密輸団と取り締まりにあ
たる警察の攻防は熾烈で、今年だけで少なくとも140艘の船が、フォス・ド・イグアス市、グアイラ市の流域
で押収された。
フォス・ド・イグアス市周辺での警備が厳しくなると共に、密輸団たちは、密輸品をより上流のグアイラ市や
南マット・グロッソ州のムンド・ノーヴォ市まで運んで不法搬入を試みている。昨今の密輸はより大掛かりで、
手口もより巧妙になっている。
グアイラ市の連警水上特別センター(Nepom)のパブロ・モラエス氏は、「見張り人を捕まえたら、携帯に
は我々の名前、車のナンバー、住所、習慣といった情報まで入っていた。非常に厄介だ」と語る。
国税庁も連警も、この地帯は最も厳しく監視が行われていると言うが、密輸撲滅のためには充分ではな
い。
パラナ川をまたぎ、フォス市とパラグアイを結ぶ友好の橋でも、密輸団は常に警察の動きをチェックしている。
見張りは、監視員の交代時間や、車両検査をしていること、トイレに行ったことまで仲間に伝えているのだ。
パラグアイとフォス・ド・イグアス市を結ぶ国道277号では10月以降、国税庁による武器や麻薬の密輸
監視が24時間体制で行われているが、密輸団も諦めない。違法な品を積んだ車の摘発は日常茶飯事
だ。倉庫には勃起増進薬、エンジン、タイヤ、玩具、バッテリー、自転車、電化製品など、2億1千万レアル
相当の押収品が並び、まるでデパートの様だ。
国境社会経済発展研究所(Idesf)の試算では、密輸によって正規の製品が受ける打撃と密輸業者に
よる脱税による損害は、2016年だけで1300億レアル。さらに、煙草の密輸は組織的犯罪や暴力を増
加させるとしている。
ルシアノ・バロスIdesf所長は、「政府は、密輸取り締まりを投資だと考えるべきだ。消費は健全化されるし
、不良品がシャットアウトされることで、ブラジルの資源が増えるのだから」と語る。