ピラール・ド・スール日本語学校主催で『第38回校内お話発表会』が10月12日、同文協会館で行われた。発表会には日語学校の4歳の幼稚園児から16歳の全生徒54人が参加した。
午前8時半に開会式が始まり、文協会長阿部勇吉氏、学校長南満氏より挨拶の言葉があった。続いて「10年以上お話をやってきているけど、私は全然慣れない。いつも舞台の上では震えるし、泣きそうになる」と数日前から緊張しているという吉岡香織さん(16歳)が生徒代表の挨拶を行った。
9月24日にサンパウロで行われた『第38回サンパウロスピーチコンテスト・第11回弁論大会』で『スピーチBの部』で優勝した寺尾めぐみさん(15歳、三世)は『6年生・上級生1の部』で出場し、SNS(ソーシャルネットワークサービス)であふれ返っている今の世の中で、それに依存することなく本当に信頼すべき友や友情関係を構築していくことの重要性を自身の体験をもとに話した。
日本語の勉強を始めまだ3年足らずのルジーネ・ジョオン君(14歳、非日系)は、同コンテスト』で審査員特別賞を受賞し、この日は『4年生・5年生の部』で出場した。数年間も母にお願いしてようやく念願の日本語学校に入れたこと、そして授業や太鼓部や陸上部やソーラン部の活動を通して学んだことや同校でできた友達に対する想いを述べ、「これからブラジル学校が忙しくなるけど、まだ日本語学校をやめたくない」と力強く締めくくった。
『同コンテスト スピーチAの部』で優勝した宗ゆきさん(15歳、三世)は、「世界を平和にするためには、まず自分の周りの人を大切にすることが大事。1人でもそんな人が増えるように皆で頑張りましょう」と訴えた。
特別発表として先の弁論大会で見事優勝した卒業生の奥田シンジ君(18歳、四世)が『もったいない』というテーマで、「周りの目を気にして偽りの自分を演じ続けるような人生をもったいなく思う」と会場にいる人々に語りかけた。
この日一際客席の心をつかんだのは『上級生3の部』の横飛英雄君(16歳、四世)。「12年通ってきた日本語学校では楽しいことばかりでなく辛いことや悔しいこともたくさん経験してきたが、ボクはすごく大きく変わった」と会場の生徒に強く訴えた。
「保護者の方々に知って頂きたい。日本語学校から早く出るということは、多くの可能性やチャンスを切り捨てることになるということを」と、言語習得のみならず多岐にわたって行っている日本語教育の意義の再認識や再評価を促した。最後に感極まって言葉に詰まり、終了後は号泣する姿があった。
審査員長の田頭氏は講評で、「3年連続審査員をさせて頂いたが、皆が非常に成長していてとても驚いた。日本語学校に来ている生徒はブラジル、日本両方の文化を知り心が広くなる。両方の比べたものをもっと良くしようとすることができる」と生徒に励ましの言葉をかけた。
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聖南西地区では15年ほど前に、既存の物語の朗読をしてもよいとの方針に変わり、ピラール・ド・スール日本語学校でも多くの生徒が朗読を選択して発表をしていた。しかし日本移民百周年の2008年に、全生徒に移住学習に関連した作文を書かせて発表させたのを機に、全員自作の作文をもとにして発表する形式に戻した。「発表会だからといって体裁のいい立派な内容に変えることはせず、できる限り生徒本人が書いた内容や言葉を大切にし当人の日本語力に見合ったものに手直しした内容」になっていると言う。指導する教師の熱意が強く感じられる行事だ。なお、同校では「日本で教育を受けた20代・30代の日本人、日本語教育または小中学校教育経験者」を募集している。希望者はメール(acdps.ejps@gmail.com)まで連絡を。