「日焼けして腕が真っ黒になっとる!」――。滞在が終盤に差し掛かった先月13日、兵庫県人会による歓迎会がサンパウロ市のニッケイパラセホテルで行なわれ、シャツの袖をめくった学生の一人が大きな声をあげた。照りつける太陽の下、農場や牧場での研修に励んだ彼らの顔は黒く焼けていて、清々しい笑顔がまぶしい。
兵庫県が実施する「第39回若手地域農業リーダー育成研修制度」で、県内の農業高校や大学に通う学生11人が先月5から16日まで滞伯。パラナ州クリチーバ、マリンガ、サンパウロ州ポンペイア、マリンガで、各地農場の視察やホームステイ、日系団体との交流を行なった。
研修生のリーダーを務めた農業大学の藪林みなもさん(19)は「国が違えば育て方も大違い。驚くことばかりでした」と語る。
藪林さんの専攻は果樹栽培。クリチーバのブドウ農園に訪問した際、果実を包む紙の形状が違うことに気が付いた。日本では虫害を防ぐために全体を包むが、視察した農場では果実の上部のみを覆っていた。
「クリチーバでは日本ほど虫は出ないけど、雹や雨が良く降る。上にかぶさるような形状をしているのは実を守るためだと聞いて、すごく納得しました」と言う。
農業大学で米や豆などの作物栽培を専攻する富田晃平さん(19)は、研修前にブラジルの大規模生産で、日本のように細かく品質管理をすることができるのか疑問に思っていた。
実際に農場を見学し、「余りにも大規模なため細かい管理が難しいと思った」とも。将来日本で農業をしたいと考える富田さんは「たくさん収穫することも大切だが、小規模でも品質や安全性を高めるなど、日本らしいやり方で付加価値を高めたい」と話した。
団長で加古川農業改良普及センター長の小舟博文さんは「『百聞は一見にしかず』。見て触れて経験することに適うものはありません。学生たちにとって、今回の研修は一生の財産になるはず」と総括した。
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ブラジル兵庫県人会による歓迎会で、農業研修に参加した生徒たちは滞伯の感想を発表した。彼らが口々に言うのは、現地の人とのコミュニケーションについて。「ブラジルの人はフレンドリーですぐ打ち解けられた」「ここでは日本人らしい謙虚さはいらない。自分も積極的になろうと思った」「日系人のホームステイ先で本当の家族のように接してもらった」「ブラジル人は言葉が分からなくても身振り手振りで伝えてくる」など。農業について学ぶだけでなく、関わった人たちと交流し、その人柄に触れたようだった。