今年中に年金問題を含む社会保障制度改革の下院承認を目指す政府が、同制度改革を行わなければ、2028年には保健費と教育費の支出や両分野への投資が不能となるとの試算例を提示したと3日付現地紙が報じた。
社会保障制度改革には上下両院で2度ずつ、議員総数の3分の2以上の賛成票を得なければならない。だが、現状では賛成票獲得が困難なため、連邦政府は改革の重要性を説くため、同制度改革を行った場合と行わなかった場合とで2036年に生じる差をまとめた資料を作成した。
それによると、同制度改革を見送った場合、予算の伸びは前年のインフレ率までとするとの上限法の中でカバーできるのは、社会保障費と公務員給与、失業保険などの一部に過ぎず、保健費や教育費などは連邦政府の管轄外に置かざるを得なくなるという。
政府側の試算では、保健費や教育費が払えなくなり、投資も不可能となるのは2028年だ。その後は、国立社会保障院(INSS)の管轄下の老齢年金や遺族年金、病気手当や事故手当てなどの社会保険金の支払さえ困難になるという。
他方、同制度改革を行えば、年金や社会保障費の支出額の伸びが抑えられ、保健・衛生や教育などに割く資金が確保できるという。
11月17日に始まった社会保障制度改革に関する政府の広告は、11月30日に裁判所から停止命令が出たが、同じ日には、ブラジル人の平均寿命が75・8歳に延びた事も報じられている。2016年発表の平均寿命は75・5歳だから、1年で0・3歳延びているが、平均寿命が延び、年金生活者が増えれば、若者の負担が増える事は、世界各国で実証済みだ。
来年は統一選挙年で、国民に不人気な年金改革などを行うのがより困難になる事は、連邦政府と議会双方が認めている。連邦政府は、現在の社会保障制度を維持すれば他の分野への資金が食いつぶされると言う事で、社会保障制度改革法案の審議を急ぐと共に、経済指標改善などを示し、再選を目指す議員への心象悪化を避ける意向だ。
テメル大統領は3日も官邸で昼食会や夕食会を開くなど、票の取りまとめに必死だが、6日といわれていた下院での初回審議は来週持ち越しの可能性が強く、休会前の下院通過は微妙なようだ。
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