サンパウロ市では、通勤などで排気ガスを2時間吸っていただけで、タバコを1本吸うのと同じくらいの影響が肺に残る事が、サンパウロ総合大学(USP)の調査で分かったと、5日付現地紙が報じた。
住環境や通勤・通学などで汚れた大気と接する時間が長い人の肺は、30年経つと、1日の喫煙本数が10本以下の、軽度の喫煙者の肺と同じ状態になるという。
この調査は、USPの病理学者、パウロ・サルジーヴァ教授の主導で行われたものだ。サルジーヴァ教授は、USP内の死因鑑定機関である、死因鑑定サービス(SVO)に運ばれた死体の肺の状態と、生前の生活環境との関連性を調べた。
USP医学部大気汚染研究所所属の生物学者、マリアナ・ヴェラス教授は、「以前は炭素で真っ黒になった肺を見ると、喫煙者だったと結論付けていたけど、今はそうとは限らない」と語った。
調査員たちは遺族に対し、亡くなった人はどこに住み、どんなところで多く時間を過ごしていたか、どんな職に就き、通勤や通学などで移動するのに要していた時間はどれくらいか、喫煙者、もしくは受動的喫煙者だったかなどを問い、その結果と遺体の肺の状態を分析し、生活環境との関連性を調べた。
「トラックの運転手や交通整理員らの健康状態は、仕事に行くためだけに外に出る人や、窓を閉め、エアコンの効いた部屋の中で過ごしている人とは違う。私たちは肺に溜まる汚染物質の量と、生活環境の間に関連性を見出そうとしている」とヴェラス教授は語る。
同調査はまだ継続中だが、4~6日にナイロビで開催中の国連環境会議にあわせ、予定を早めてその内容が発表された。世界中の大気汚染による死者は、年700万人に上る。
大気汚染と肥満の関連性も疑われる
これまでは肥満と大気汚染の関連性が疑われる事は少なかったが、USP大気汚染研究所は、両者の関連性についても調べている。大気汚染がホルモンのバランスを崩す可能性は以前から指摘されており、伝染病学者が行った研究では、大気汚染と生物の代謝減退の関連性も明らかになった。
実験用のハツカネズミを、サンパウロ市の標準的な空気と同じ汚染濃度の大気の中におき、その食欲を調べた場合、普段と同じだけ食べているのに、食欲が止まらなかった。
ヴェラス教授は「大気汚染は、飽食シグナルを伝達する、レプチンというホルモンに影響を及ぼし、肥満抑制効果を減退させた。これは人間にも起こり得る」と語った。