世界を股にかけて活躍するファッションカメラマン、高野ミケランジェロ・ノブオさんが撮影のために来伯し、先月30日、編集部を訪れ近況を語った。バイーア州で20日間の撮影を終えたばかり。集大成となる写真集の撮影がいよいよ終盤を迎えているという。
バイーア州サルバドールでの撮影を終えた高野さんの肌は真っ黒に。「日焼け止めを塗るとカメラを握る手がすべるでしょ。だからつけられない。おかげで日に焼けた背中が痛くて夜も寝れませんよ」と豪快に笑う。
佐賀県生まれの高野さんは13歳の時に両親と渡伯。当地で育って美術学校を卒業後、85年に、日本人としては初めてファッション雑誌『ヴォーグ』ブラジル版のカメラマンに採用された。以来、東京、パリ、ニューヨーク、サンパウロ市などに事務所を設け、世界を股にかけて飛び回っている。
高野さんは、7年前から集大成となる写真集を発刊すべく、自作の撮影を毎年当地で行なっている。外国のカメラマンは通常リオを撮影地に選ぶが、そこはブラジル育ちの高野さん。あえてバイーアを選び、しかも黒人をテーマに撮影する。今回が4回目。来年、最後の撮影に臨み、「再来年には刊行したい」と意気込む。
今回は黒人モデル50人をオーディションし、選りすぐりの男女2人を中心に撮影。「男のモデルは198センチで筋骨隆々。走れば黒ヒョウのようだし、手を広げれば鷲のよう。大迫力の写真が撮れた」と手応えを語る。
衣装や装飾品にこだわり、まるでアフリカで撮ったような印象になったという。高野さんは「バイーアは音楽などの文化が注目されているが、そこに住む人々にはあまり光が当たっていないように感じる。彼らのルーツである『アフリカ』に焦点を当てようと思った」と語った。
実は日本移民110周年に関連する撮影の話も持ちかけられている。「日本での撮影になるらしい。拠点を東京からニューヨークに移そうとしているので仕事を受けるかは検討中」とのこと。今月13日に離伯するが、来年2月には再び撮影に訪れる予定。
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世界を飛び回って撮影する高野ミケランジェロ・ノブオさんだけに、世界的な出来事に立ち会うような経験も。例えば、2015年11月のパリ同時多発テロのとき、襲撃されたバタクラン劇場近くのカフェで、ちょうど打ち合わせしていた。「突然バリバリバリってすごい音がしたから、そっちに行ってみたら何センチもあるぶ厚いガラスに弾が貫通した跡が。戦争用の機関銃だとピンときた」と振り返る。「でもね、パリは良いところ。日本の方が安全すぎるんだよ!」と笑い飛ばした。