【既報関連】1年にわたる議論の末、正式に、社会保障制度改革の年内採決の可能性は潰え、政府は来年2月19日の下院採決を目指す方針となったと14日付現地各紙は報じた。
社会保障制度改革は国家財政健全化のために避けて通れない道とする政府だが、反対勢力との折衝で譲歩を強いられ、現在審議中の改革案は、原案よりずっと歳出削減効果が低くなっている。
改革案成立のために必要な、議員総数の60%以上の賛成票(上下両院で2回ずつ)を確保するためには、さらなる改革内容の譲歩が必要だと政府は認識している。
ロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)は、「2~4月までに採決を終えられれば、社会保障制度改革を来年の総選挙の争点から外す事が出来る。有権者は、各議員が採決時にどうしたかを知った上で投票したいだろう」と発言した。
社会保障制度改革は昨年12月5日に議会で正式に議論が始まり、今年5月には特別委員会を通過していた。
しかし、同月のJBSショックで政界に激震が走ると、改革の動きはほぼ半年にわたって停止した。ようやくその動きが再開されたのは、連邦検察庁が提示した、テメル大統領に対する2回にわたる起訴に対し、議会が捜査継続を棄却した後だった。
原案では、成立後の10年間で6千億レの歳出削減効果を見込んでいたが、その効果は、特別委員会での合意が成立した5月の時点で4800億レに落ちていた。
議論を再開するため、5月に合意され、現在審議中の改革案では、最低年金負担(積立)年数を現行の15年のままとすることを受け入れ、農業年金や、高齢者、身障者に対する特別恩給(BPC)の条件も据え置きとされた。政府がさらに、2003年より前に採用された公務員への年金受給条件を緩和する可能性も濃厚だ。
エンリケ・メイレレス財相は、政府は改革案の微調整を行いはするが、ブラジル経済の行方の障害になるような内容は受け入れられないとしている。ファビオ・カンチュック財務省経済政策局長も、「社会保障制度改革が成立しなかったら、来年のGDP成長率は現行予測の3%から、2・85%に落ちるだろう」と述べた。
国内大手のブラデスコ銀行頭取で経営審議会議長のルイス・トラブコ・カッピ氏は、「社会保障制度改革は選挙よりも重要だ。テメル大統領はまだ、改革達成のための政治的余力を残している」と語った。
採決の来年持ち越しが確実となった14日、レアルは対ドルで前日比0・6%下落し、1ドル=3・3365レとなった。これは5月のJBSショック直後に記録した1ドル=3・389レに次ぐレアル安水準だ。
メイレイレス財相は同日、信用格付会社への説明も試みた。