15~16年に、ブラジルでの不況を逃れるために欧州に移り住んだブラジル人労働者が、不法滞在者として国外退去命令を受けており、ブラジルが再び、欧州連合(EU)から域外追放される国民ランキングのトップテン入りした。
EUの欧州対外国境管理協力機関(Frontex)が18日に発表したデータによると、今年上半期に欧州各国がブラジル人に対して出した強制送還命令の件数は3100件で、16年上半期の2300件より37%増えたと、19日付現地紙が報じた。
ベルギーの首都、ブリュッセルの移民問題対応機関によると、ブラジル人向けの国外退去命令の大半は、ブラジルが史上最大の不況に陥っていた15~16年に欧州大陸に移住した労働者に出されている。
国外退去の対象は不法滞在者で、入国を拒否された人の数は含まれていない。16年にEU諸国への入国を拒否されたブラジル人は3700人、17年上半期は1700人だった。今年の第2四半期は、イタリア入国を拒否されたアルバニア人(826人)、ポルトガル入国を拒否されたブラジル人(312人)、スペイン入国を拒否されたコロンビア人(347人)らのケースが際立って多いという。
今年上半期に欧州で国外退去命令を出された国民の数で、ブラジルは10位に入った。9位のシリアとの差はわずか200件だ。最も多く強制送還されたのはウクライナとモロッコで、共に1万1千件を超えている。
ブラジルが最後に同ランキングの上位10位以内に入ったのは、EUの経済危機が頂点に達し、EU諸国が移民受け入れ政策を厳格化した2011年で、6千人に強制退去命令が出た。今年はこれを上回る見込みだ。
現在のブラジル人への国外退去命令増加は、欧州諸国が不法移民や不法就労の取り締まりを強化したことと、ここ数年間でEUに不法滞在するブラジル人が増えたことが主な理由だ。
16年、EU諸国は不法滞在の外国人に対する国外退去命令を30万3千件出した。17年上半期は3万7千件だ。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は18日、同国内にいる不法滞在者の国外追放を加速させるための新法案を提出する意向を示した。
スイスのジュネーヴに住む不法滞在者で、サンパウロ州カンピーナス市出身のブラジル人女性(28)は、「ブラジルで失業し、先に来た従姉妹を頼って15年にここへきた。一応ウエートレスとして3千スイスフラン稼げているけど、支払いはオーナーの気が向いた時だけ。ここでは何の権利もないから黙っているしかない。警官がお客として店に来ても、見つかるんじゃないかと心配になる」と語っている。