「サンバはリオでしか聴かれない」「セルタネージャは都会では聴かれない」。ブラジルで生活していて、なんとなく耳にしていた話がこのたびデータとして裏づけを持って証明された。
15日付フォーリャ紙は、ブラジル国民がユーチューブやスポティファイなどのデジタル音楽視聴媒体を介した音楽視聴を基に、国際レコード産業連盟(IFPI)ブラジル支社がまとめた、各音楽ジャンルが最も聴かれている地域を点によって表した分布図を掲載した。
一言で「ブラジル」といっても、同国は米国にも負けない多様な人種の坩堝の国。どこに住んでいるかで人種構成も貧富の差もまるで違う。このことは、各地域で流行っている音楽の傾向にもあてはまる。それが今回、見事に証明された。
まず、国際的に「ブラジル音楽と言えば?」との問えば皆が思いつくサンバだが、現在聴かれている地域は、もとから伝統のあるリオに集中していることがわかった。あとはサンパウロ州や南部のリオ・グランデ・ド・スル州の一部、北東部の一部沿岸部に過ぎない。既に「流行音楽」というより「伝統音楽」になりつつあるサンバだが、少し寂しい結果になった。
また、90年代に爆発的人気を誇ったものの、現在はイベッチ・サンガーロなどの限られた歌手のみの人気になった「モダン・サンバ」のアシェーも、その本場のバイーア州など北東部に集中し、リオ州やサンパウロ州までは影響力が及ばなくなっている。
こと、音楽の売り上げやラジオ局に占める割合が圧倒的な「ブラジル版カントリー」のセルタネージャは、聴かれている地域に意外と偏りがあることが判明した。発祥の地と呼ばれる中西部のゴイアス州や南部のサンタカタリーナ州と、共に農業地帯で圧倒的な強さを見せる反面、サンパウロ市やリオ市のような大都会では、局やアーティストの知名度とは裏腹にあまり聞かれていない。実際、サンパウロの音楽ファンの間でも、思ったほど話題にあがらないのが現実だ。
今、ブラジル全土で地域に関係なく、もっとも万遍なく聞かれているのはファンキだ。これは米国の黒人音楽のR&Bをブラジル流に翻案した音楽だが、国内の若者に圧倒的な人気がある。
ファンキは「サンパウロ流」が「ファンキ・パウリスタ」、「リオ流」が「ファンキ・カリオッカ」と呼ばれるが、MCケヴィーニョなどの人気アーティストがいる前者の方が人気だ。
一方、同じ米国黒人音楽起源でも、ヒップホップはほぼサンパウロのみの人気、という結果も出ている。これはブラジルにおけるヒップホップの解釈が「真面目な黒人のメッセージ音楽」とややシリアスなもののため、広がりにくくなっている側面がある。
続いてロックを見てみると、日本でいわゆる「洋楽」といわれる英米からのものは、大型フェスティバル「ロラパルーザ」が行われるサンパウロ州で特に強く、白人人口の多い南部のパラナ州やリオ・グランデ・ド・スル州でも強い。これらの州都のサンパウロ、クリチーバ、ポルト・アレグレは、英米アーティストの公演がリオやブラジリアよりも目立つくらいだ。
また「ブラジル国内のロック」になると、前述の地域のほかに、ローカルのバンドシーンがあるリオ市やミナス・ジェライス州ベロ・オリゾンテ市、北東部沿岸のペルナンブッコ州レシフェ市、リオ・グランデ・ド・ノルテ州のナタウ市なども加わり、分布が広がる。
また、クラブ・ミュージックになると「エレクトロ」「レゲトン」といった最近の若者に流行りのものは白人の若者ウケするのか、パラナ、サンタカタリーナ、リオ・グランデ・ド・スルの南部3州で圧倒的に強い。
カエターノ・ヴェローゾやジルベルト・ジル、ミルトン・ナシメント、シコ・ブアルキなど、いわゆる70年代に世界的に広がったブラジリアン・ポップスのMPBは、サンパウロ、リオ、ミナス・ジェライスの南東部3州に集中する結果が出ている。
細かいところだと、クラシック音楽は圧倒的にサンパウロ州、レゲエは北東部、北東部ペルナンブッコ州の伝統音楽のフォフォーは同州周辺、ゴスペルはリオ州やエスピリトサント州などの沿岸部で強いという。
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