16日にアラブ首長国連邦のアブダビで行なわれたサッカーのクラブW杯で、南米覇者で南大河州ポルト・アレグレの名門グレミオは、欧州王者のレアル・マドリッド(スペイン)に0―1で敗れ準優勝に終わったが、そこには点差以上の大きな壁の存在が感じられた▼だが、それを責めても、仕方がないところでもある。相手は世界中から優れた選手を集めていることで知られる欧州のビッグ・クラブの中でも頂点の存在。方やグレミオは、その欧州から選手がもっとも引き抜かれている国、ブラジルの一チーム▼ブラジルサッカーは、欧州に行けなかったレベルの選手と、渡欧前の有望選手の集まり。ブラジル人の良い選手は全盛期を欧州で過ごしている最中だ。この状態では、たとえ南米を制しても欧州王者を下すのは至難のわざだ▼「いっそ、ブラジルにも、好選手を根こそぎ引き抜くようなビッグ・クラブが現れないものか」。そう思っていたコラム子だが、それを密かに実行に移そうとしているクラブがある▼それがパルメイラスだ。同チームは先日、今季までサントスの司令塔で、欧州行きを期待されながらよい獲得先がなかったルーカス・リマ(27)との契約に成功した。スポーツ紙の情報によるとパルメイラスは、フルミネンセの若き司令塔のグスターヴォ・スカルパ(23)、14年W杯メンバーで今季所属チーム(ウクライナのシャフタル・ドネツク)との契約が終わるベルナール(25)、同じく今季で契約の終わる中国リーグ2年連続MVPのリカルド・グラール(26)、名門バイエルン・ミュンヘンのサイドバック、ラフィーニャ(32)の獲得を狙っているという。これが実現したら、ブラジル国内では、大量に欧州に選手が取られるようになって以降では最大級のスーパーチームになる▼現在のブラジルは毎年、各チームで実力伯仲。欧州のように、限られたチームだけが大金の補強で半永久的に強く、同じリーグでも、中位、下位では雲泥の差があるような状況とは違う。ただ、多少、下位チームの戦力を犠牲にしてでも「夢のある大型チーム」を作ることで、今の欧州の名門はサッカーのレベルと人気を上げている。ブラジルでもそのやり方に学ぶクラブが出てもおかしくはないし、少なくともチームのサッカー・レベルをあげるには大事なことのように思われる▼そうでなければ、欧州に行く前の有望若手をチームの顔にして魅力作りをするのもいいだろう。今回南米を制したグレミオやサントスなどが、これに近い路線を取っている▼また、今年の全国選手権を制したコリンチャンスや、ミナス・ジェライスの名門クルゼイロなどはバイア州やゴイアス州、サンタカタリーナ州といった、1部中位、下位の主力メンバーの引き抜きで強差を保持するタイプだ▼今年、これまでにない下位に沈んだサンパウロFCは、有望若手選手の欧州への大量放出と、獲得して来た南米諸国からの助っ人選手が活躍しない誤算で苦しんだ。だが、パルメイラスのように、欧州に行けなかった、あるいは、欧州や中国帰りの代表クラスの選手でスーパーチームを組んで復活を狙うという手もあると思うが、どうだろう。(陽)