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サッカーW杯ロシア大会=大胆予測=なるか? ブラジル6度目の優勝=上り調子で7試合目決めろ!=苦手の欧州勢克服がカギ

サプライズ召集なるか? ワトフォードで活躍のFWリシャルリソン(写真は昨年フルミネンセ時代のもの・Lucas Merçon/Fluminense FC)

サプライズ召集なるか? ワトフォードで活躍のFWリシャルリソン(写真は昨年フルミネンセ時代のもの・Lucas Merçon/Fluminense FC)

 4年に一度、世界各地域を代表する32カ国の代表チームが、1カ月間でサッカー世界一を決めるW杯。6月14日のロシア対サウジアラビア戦で開幕。1次リーグ(グループステージ)3試合のあと、決勝トーナメント4試合、計7試合で優勝を決める短期決戦型の勝負だ。決勝戦は、泣いても笑っても7月15日。いかに大会前半でチームの連携を高め、後半で本領発揮していくかが見もの。ブラジルは前回大会で、自国開催でありながら準決勝のドイツ戦で、なんと1―7の屈辱的な大敗を喫した。その借りをロシアで返してほしいと国民は切望している。そんな気持ちを代弁し、当編集部きってのセレソン応援団、井戸規光生記者と沢田太陽記者の二人が、W杯代表選手23人の予想と、組み合わせ抽選をもとにした大会の展望を大胆予測してみた。

 

座談会

井戸規光生・・コリンチャンスへの熱狂的愛が理由でブラジルに移住の筋金入りサッカー・ファン。
沢田太陽・・サッカーは2010年にサンパウロ市移住後に興味も、12年ロンドン五輪後のセレソンの試合は全戦テレビ観戦。

 

大会出場枠23人予想編


注目の「3人目のキーパー」は、チッチ監督の愛弟子?

南米予選を1位独走で突破した、不動のイレブン

南米予選を1位独走で突破した、不動のイレブン

【沢田】では早速、W杯に出場する23人の代表選手から占ってみよう。まずはキーパーから。
【井戸】レギュラーがASローマ所属のアリソン。そして、その控えがマンチェスター・シティのエデルソンで決まりかと。
【沢田】二人ともまだ25歳以下で、世界的なクラブのレギュラーだからね。一気に層が厚くなったよね。
【井戸】三番手なんですが、最近の招集だと、チッチ監督の愛弟子でもあったコリンチャンスのカシオが有力です。
【沢田】そうだね。
【井戸】しかしここに、昨年グレミオのリベルタドーレス杯制覇に貢献したマルセロ・グローエが入るのではないかと。
【沢田】実は僕も、ときに神業みたいなプレーするグローエの方がカシオよりも好きなんだ。
【井戸】リベルタドーレス杯の準決勝でも、ゴール前シュートしたボールを数10センチ手前で、右手ではじいたすごいプレーもありましたよね。
【沢田】あれ、すごかったよね。手を骨折しても不思議はなかったのに。でもね、実際の出場の可能性はほとんどない第3キーパーでしょ? チッチはむしろ選手としてより、チーム・スタッフとしてカシオを置いておきたいんじゃないかな。
【井戸】つまり、選手たちとの間の意思疎通を円滑にするためにカシオが必要だと。その考え方は僕も理解できますね。


世界が誇る両サイドバックの控えは?

【井戸】続いてサイドバックにいきましょう。まずは右サイドから。
【沢田】レギュラーはもう決まりでしょう。ダニエル・アウヴェス(PSG)。ベテランではあるけど、彼の地位は揺るぎようがない。
【井戸】では、もうひとりは?
【沢田】ここ最近、召集で結果も出しているダニーロ(マンチェスター・シティ)でしょう。
【井戸】右サイドバックの控えは少し前までならコリンチャンスのファギネルだったんです。
 しかしダニーロは、マンチェスター・シティで、名将グアルディオーラ監督の指導を受けてすごくよくなった。
【沢田】もともとチッチの前任のドゥンガが、よくダニーロを召集してたんだよね。レアル・マドリッドにいたときに伸び悩んでいたんだけど、シティで盛り返したよね。
【井戸】では左サイドを。
【沢田】ひとりは、これも当然マルセロ(レアル・マドリッド)だね。
【井戸】今季はどこの報道を見ても、このポジションでは世界ナンバーワンの評価でしたからね。
【沢田】長いレアルの在籍の中でも、ベスト・シーズンだったね。
【井戸】控えはアレックス・サンドロ(ユベントス)と、フィリペ・ルイス(アトレチコ・マドリッド)の熾烈な争いです。
【沢田】俺はこの2人だったらアレックスなんだよね。マルセロに似て攻撃型だしね。
【井戸】僕はルイスかな。最近でこそアレックスですけど、招集期間はルイスの方が長いし、それこそドゥンガの時代はマルセロを追いやってレギュラーでもありました。
【沢田】ドゥンガは守備型が好きだったからね。マルセロの攻撃は捨てがたかったんだけどね。
【井戸】マルセロはサイドバックですけど、実質的に攻撃要員がもう一人増えるようなものですからね。


センターバックにはクラブ南米一の立役者も?

クラブW杯で奮戦し、評価を大きく上げた、センターバックのジェロメル(Lucas Uebel/Gremio FBPA)

クラブW杯で奮戦し、評価を大きく上げた、センターバックのジェロメル(Lucas Uebel/Gremio FBPA)

【井戸】続いてセンターバックに行きましょう。
【沢田】ここは3人目まではもう決まり。チッチ監督就任後はずっと呼ばれているマルキーニョスとチアゴ・シウヴァのPSGコンビと…
【井戸】インテル・ミランのミランダですね。日本代表の長友のチームメイトです。
【沢田】あと1人、4番手のセンターバックは招集のたびに人選が代わっているんだ。ただ、クラブW杯決勝の活躍を見ると…
【井戸】ですよね! グレミオのジェロメル。安定感が素晴らしい。
【沢田】彼がグレミオの守備を統率したおかげで、グレミオはあのレアル・マドリッド相手に不運なフリーキックからの1失点で済んだ。ブラジル内ベストのディフェンダーと呼ばれているだけのことはある。
【井戸】上背もありますしね。彼は4番手のセンターバックとして、有力候補ですね。3月の親善試合に呼ばれるかどうかが注目です。


中盤の底の2人は世界一

【沢田】では、中盤の底、ボランチを見てみよう。でも、ここは…。
【井戸】動かしようがないですよね。カゼミロ(レアル・マドリッド)とフェルナンジーニョ(マンチェスター・シティ)。
【沢田】この2人が、今のこのポジションなら世界一と二位でしょ。他国で2人に並ぶ選手を思いつかない。
【井戸】今はカゼミロがレギュラーですけど、フェルナンジーニョもすごく調子がいい。さっきもダニーロのところで言った、グアルディオーラ監督の全幅の信頼を得てすごく良くなった。
【沢田】実際、チッチもこの2人以外にほとんど招集してないもんね。
【井戸】でも仮にこの2人が怪我でもしたらどうするんでしょうね。
【沢田】それ困るよね。一応アルトゥール(グレミオ)とかフレッジ(シャフタール・ドネツク)とかもいるけど、ちょっと差が大きすぎるね。


最大の懸念、中盤の選手の控えは?

昨年リベルタドーレス杯の活躍で23人枠に滑り込むか? リオ五輪優勝メンバーでもある、グレミオのFWルアン(Lucas Uebel/Gremio FBPA)

昨年リベルタドーレス杯の活躍で23人枠に滑り込むか? リオ五輪優勝メンバーでもある、グレミオのFWルアン(Lucas Uebel/Gremio FBPA)

【沢田】続いては2列目の真ん中行こうか。
【井戸】ここは最大の懸念事項ですね。
【沢田】レギュラーは、レナト・アウグスト(北京国安)にパウリーニョ(FCバルセロナ)で、共に元コリンチャンスでのチッチの愛弟子。ここも控えが手薄なんだ。
【井戸】この2人の控えを誰にするかという問題はずっと未解決ですよね。
【沢田】俺はエルナネス(サンパウロFC)がいいな。
【井戸】今年のブラジレイロン(全国選手権)での活躍はすさまじかったですからね。2部降格危機に瀕したサンパウロFCが、シーズン途中に急遽中国のチームから獲得しました。リーグ戦の半分(19試合)しか出てないのに9点も取って得点王ペースですよ。彼にそんな得点を取るイメージなかったのに。
【沢田】彼は13年のコンフェデ杯、14年のW杯でも出ているからね。
【井戸】そうだった。イタリアでもラツィオで長く活躍しましたからね。
【沢田】そのときはボランチの控えで後半の守備固めだったんだよ。あっ、それ考えると、さっきのカゼミロ、フェルナンジーニョの控えとしてもいけるね。規光生君は誰を推す?
【井戸】僕はルアン(グレミオ)を。
【沢田】あっ、僕もルアンはパウリーニョの控えで考えてたんだ。彼には23人枠に入ってほしい。
【井戸】リベルタドーレス杯でのMVPは彼ですしね。
【沢田】南米でトップの選手だったら普通招集されるよね? それがあまり呼ばれてないという。
【井戸】そこがブラジルの層の厚さですよ。
【沢田】でも彼、リオ五輪のときにネイマールとのコンビネーションがよかったし、活躍もしたじゃない? 大舞台に強いはずなんだ。五輪のときだって、あのときに格上だった選手を抜いてレギュラーになったし。思い入れはあるんだ。
【井戸】ほかの候補はどうでしょう。
【沢田】チッチはジュリアーノ(フェネルバフチェ)が好きだよね。今トルコにいる。彼のプレースタイルがルアンに似ていて、サイドも2列目も両方できるんだ。
【井戸】国内ではルーカス・リマ(今年よりパルメイラス)も召集されていましたけど、厳しいでしょうね。リマは15年頃がピークだったかな。


サイドの攻撃に新星登場

【井戸】ではサイド・アタッカーに。
【沢田】右はここも豪華。フィリペ・コウチーニョ(リバプール)にウィリアン(チェルシー)。
【井戸】イングランド、プレミアリーグの強豪チームのレギュラー2人ですからね。贅沢です。
【沢田】そして左サイドは、ひとりは言うまでもなくネイマール(PSG)。そしてその控えだよね。
【井戸】僕はダグラス・コスタ(ユベントス)ですね。チッチになって故障が多いんですけど、ドゥンガ時代はほとんど彼が攻撃の基点だった。
【沢田】バイエルンにいた頃、よかったしね。ただ、点が取れないんだよな、彼。
【井戸】沢田さんは?
【沢田】俺はリシャルリソン(ワトフォード)を。
【井戸】ほお~イングランド、プレミアリーグの弱小ワトフォードにフルミネンセから移籍したら大活躍で、チームを上位に押し上げています。
【沢田】彼は得点もアシストも多い。その勢いを買いたいんだよね。
【井戸】しかもまだ20歳で。彼の世代は、すごいんですよね。マウコン(ボルドー)も、ダヴィド・ネレス(アヤックス)も大活躍で。
【沢田】そうなんだよ!ただ、マウコンとネレスは両方とも右のアタッカーなんだけど、リシャルリソンだけ左だから、せめて彼だけでもね。


安泰だったセンターフォワードに異変?

【沢田】では、最後にセンターフォワードを。
【井戸】ひとりは決定ですよね。ガブリエル・ジェズス(マンチェスター・シティ)。彼もまだ20歳ですけど、セレソン、そしてシティでレギュラーをとって成長していますよね。
【沢田】ジェズスのおかげでネイマールだけに頼らずに済むようになった。で、彼の控えなんだけど、本来ならロベルト・フィルミーノ(リバプール)で決まりだと思ったんだけど。
【井戸】ここに来て異変あり、なんですよね。コリンチャンスのジョー。
【沢田】彼は14年のW杯で〃点の取れないフォワード〃扱いされて批判されて、しばらく放蕩生活もあったりして不安定だったんだけど。
【井戸】17年まさかのコリンチャンスでの復活ですよ。全国選手権18得点で得点王にもなって。
【沢田】彼のセレソン入りを猛プッシュしている評論家もいるね。
【井戸】そうなんですか? ジョーに関して、他の選手にはない利点があるとすると、上背があるので空中戦は有利です。
【沢田】ただ、フィルミーノも、得点取らない日は淡白だけど、爆発したときは2点以上平気で取るからすごいよ。ましてや、チームメイトのコウチーニョがセレソンにはいるんだし。
【井戸】チッチにとっては悩みどころですね。
※この対談は17年12月上旬に行われたが、締め切り直前に「ジョー、2018年から名古屋グランパス入り濃厚」との仰天のニュースが飛び込んできた。最終締め切り(12月26日時点では、メディカルチェックを残すのみとあるが、果たして…)


欲しいのは攻撃のバリエーション

【沢田】では、今回のセレソンのメンバーはズバリどうだろう?
【井戸】レギュラーの選手たちは十分素晴らしいんですけど、11月のイングランド戦で、相手の5バックが崩せなかったのが気になります。なので、僕としては攻撃のバリエーションを増やす選手を選んでほしいですね。
【沢田】僕もそこは同じかな。積極的に攻めてほしいね。


大会展望編

1次リーグ
「パパイヤのように甘い」と評する地元紙

17年、開幕一年前に行われたコンフェデ杯開幕戦の様子。セレソンは同じスタジアムでコスタリカと戦う(President of Russia)

17年、開幕一年前に行われたコンフェデ杯開幕戦の様子。セレソンは同じスタジアムでコスタリカと戦う(President of Russia)

【井戸】続いては、セレソンはどこまでいけるか、大会展望と共に占ってみます。セレソンは1次リーグでグループEに入り、スイス、コスタリカ、セルビアと対戦しますが印象は?
【沢田】油断できる相手ではないけれど、まあ、標準的かな。スイスのところには、抽選次第では優勝経験のあるイングランドやスペインが来る可能性もあった。それに比べたらいい。
【井戸】セルビアは国際サッカー連盟(FIFA)のランキングが不当に低く、韓国、サウジ、パナマなどと同列に扱われていました。セレソンは、セルビアよりずっと弱い国と対戦できたかもしれないのに、そんなことを気にしている報道は皆無。どの新聞報道見ても「グループEは簡単」と口を揃えています。
【沢田】本当だ! 「パパイヤみたいに甘い組」なんて書いているとこまで!
【井戸】サッカー王国の貫禄ですね。
【沢田】実際、グループEはどこも攻撃力があまり高くない。スイスのチーム得点王セフェロビッチには、爆発力はない。コスタリカは欧州予選よりレベルの落ちる、北中米カリブ海地区予選10試合で14得点。
【井戸】1試合平均1・4点ですね。世界最強クラブ、レアル・マドリッドのキーパー、ヘスス・ナバスの守りが頼りですね。
【沢田】セルビアは、イングランド、プレミアリーグのサウザンプトンのタジッチが攻撃の中心。守備陣にも、欧州各国の有名チーム所属の選手がいて、W杯出場は8年ぶりだけど、4年前に出て旋風を巻き起こしたコスタリカよりも、強いんじゃないかな?
 セレソンは、初戦のスイスで攻撃陣に勢いがつけば、あとは楽かなあ。
【井戸】スイスに勝てれば、次のコスタリカはこのグループ最弱、そこでも勝って2連勝。勝ち点6で一次リーグ突破は確定ですね。
【沢田】そうなれば、第3戦セルビア戦は調整だけど、それでも問題なく勝つでしょう。


決勝トーナメント一回戦
前回引き分け、粘り強いメキシコが濃厚

【井戸】グループEの1位になれば、グループFの2位と一回戦で対戦です。
【沢田】グループFはドイツの1位がほぼ確実。メキシコが2位になって、一回戦でメキシコとあたるのは不気味だね。14年W杯で引き分けている。それに12年のロンドン五輪決勝で負けているんだよ。メキシコは粘り強いんだよね、プレースタイルが。スウェーデンの方がよっぽどやり易いよ。
【井戸】スウェーデンなら、スイスやセルビアと特徴も似ていますね。守備型で。
【沢田】メキシコには、派手な名前の選手はいないんだけど、チーム全体に粘り強さが浸透していて、案外苦戦するかもしれない。
【井戸】まあ、でも一回戦は勝ち抜けるでしょう。


準々決勝
イングランドか? 実力者ぞろいのベルギーか?

【井戸】さて、準々決勝なんですけど、グループG1位(イングランドかベルギー)対グループH2位(ポーランドかコロンビア)の勝者です。
【沢田】ここも嫌だね。イングランドかベルギーでしょう?
【井戸】普通に考えれば、そうなりますね。
【沢田】どっちがセレソンにとってやりにくいかと言えば、俺はイングランド。欧州予選10試合で失点3の守備の堅さで、エースFWハリー・ケインがいるから、「しっかり守ってあとはハリー・ケイン頼み」みたいな戦い方をされると、セレソンは嫌だね。
【井戸】実際にイングランドとは、旧年11月に対戦していて、その時はケインが怪我でいなかったんです。セレソンは、失点はしませんでしたが、イングランドの固い守りに抑えられました。
 あの試合のセレソンはベストメンバーでした。イングランドは守備面では自信を持ったでしょう。「あとはケインがいれば攻撃もOK」と思っているかも。
【沢田】世界最高レベルのプレミアリーグで、彼は14/15年シーズンから3シーズン連続で、20得点を超えている。
【井戸】ベルギーはどう見ますか?
【沢田】ベルギーはイングランドのように、「守備と強力FWケイン」のような偏った特徴を持つチームではなく、全ポジションに穴がない好チーム。前線からGKまで、欧州強豪クラブチーム所属の選手がズラリだ。
 ベルギーはセレソンとは実力伯仲だから、お互い小細工なく戦って、「負けたらごめんなさい」だよ。
【井戸】ベルギーとの準々決勝が実現したら、正々堂々の技比べが楽しみですね


準決勝
豪華メンバーそろうフランスが有力か

【井戸】準決勝では、グループA1位、グループB2位、グループC1位、グループD2位を勝ち上がってきた国と対戦です、順当ならウルグアイ、ポルトガル、フランス、クロアチア。
【沢田】そしたら、勝ち上がって来るのはフランスかな。フランスも選手層が非常に厚い。ベルギーに似たバランス型のチームだね。
【井戸】ブラジル紙の評価も「才能に溢れたチーム」です。
【沢田】まさにその通りだね。フランスはアフリカ移民の子孫が多くて、メンバーも若い。次の22年大会も楽しみだよ。
【井戸】フランスは歴史的にアフリカに植民地が多くて、以前から移民が多かったですよね。移民の問題は社会に摩擦、負担を引き起こすこともありますが、若い人口がふえ、人種が混ざりあって、サッカーの戦力アップにはよい事ですよね。
 準決勝では、ウルグアイ、ポルトガルと対戦する可能性もありますが。
【沢田】俺は正直どっちでも怖くないと思う。
【井戸】僕も同じ意見です。ウルグアイの強さは世界中が認めています。ただ、セレソンはそのウルグアイと17年3月に敵地で戦って4―1で勝っています。
【沢田】ポルトガルはクリスチアーノ・ロナウド以外が小粒だよ。
【井戸】一応、16年の欧州選手権では優勝していますが、引き分けやPK、延長での勝ちばかりでしたしね。
【沢田】準決勝の相手はフランスが濃厚だね。2006年の準々決勝で敗れた借りを返して欲しいね。


決勝
因縁のドイツか実力派のスペインか?

セレソンは南米予選でも最大のライバル、アルゼンチンを寄せ付けなかった(Lucas Figueiredo/CBF)

セレソンは南米予選でも最大のライバル、アルゼンチンを寄せ付けなかった(Lucas Figueiredo/CBF)

【井戸】ではいよいよ決勝です。順当ならスペイン、ドイツ、アルゼンチンなどが上がってきそうです。
【沢田】その中だと、アルゼンチンは一番に消える。メッシへの依存度が高すぎるよ。
【井戸】いわずと知れた世界のスーパースターですが。
【沢田】メッシとコンビを組んで、マークを分散させつつ、相乗効果で輝ける選手がいないんだよ。若手筆頭のディバラなんて、「メッシとはやりにくい」なんて言っちゃって。
【井戸】そうですね。南米予選も最終戦でやっと突破、それも、メッシが一人で3点とっての活躍。
【沢田】逆にメッシ頼みの構図が浮き彫りになったよ。
【井戸】ではスペインとドイツです。
【沢田】どっちも強いな。この2カ国が準決勝でぶつかったとしても、どっちが上がってくるか全く分からない。
【井戸】10年大会王者のスペインは、前回14年ブラジル大会では、思わぬ1次リーグ敗退でしたが、この4年で若い選手が出てきています。世代交代に成功しましたね。
【沢田】ただ、世代交代に少し手間取って、若い選手にカリスマ性がまだないね。
【井戸】場数を踏んで出てくるカリスマ、経験と言ってもいいですね。
【沢田】それが少し不足しているのはスペインの唯一の不安材料。ただ、試合構成能力は世界一だと思う。優秀な中盤の選手がいて、キーパーも固い。セレソンと対戦したら、面白い試合になるんじゃないかな? 
【井戸】さて、やはりドイツの話は避けて通れません。
【沢田】ドイツは読めないね。14年大会で優勝して、その戦力をそのまま引っ張ってもよかったのに、16年リオ五輪や17年コンフェデ杯を上手く使って、若手の底上げにも成功した。
【井戸】リオ五輪は銀メダル、それでも決勝でセレソン相手にPK戦までもつれる試合をやっています。コンフェデ杯も若手中心で優勝。そしてW杯予選も10戦全勝と、非の打ち所がないです。
 ドイツがトーナメント表の反対側に行き、決勝にたどり着くまでにどこかで負けてくれれば、セレソンはドイツと戦わずして優勝できます。
【沢田】そう都合よくいくかなあ? ドイツを倒せるとしたら、スペイン以外考えられない。アルゼンチンなんか、最近の3大会では全てドイツに負けているんだ。
【井戸】今年3月には、セレソンはドイツと親善試合を行います。ブラジル民は「この試合で7対1の雪辱だ。本番前の試金石だ」と気合が入っています。でもドイツは?

セレソンの前に立ちはだかる最強の敵、ドイツ代表のヨアヒム・レーヴ監督(Эдгар Брещанов)

セレソンの前に立ちはだかる最強の敵、ドイツ代表のヨアヒム・レーヴ監督(Эдгар Брещанов)

【沢田】手の内を隠してきそうじゃない? あの7対1のコンプレックスを引きずっているのはセレソン。ドイツは本番前の3月に、手の内を全て見せる必要なんてないんだ。ドイツを率いて10年以上のヨアヒム・レーヴ監督は隠し玉を持っている気がしてならないね。本当に底が見えない。強敵だよ…
【井戸】分かりました。では結局のところ、セレソンはロシアW杯で優勝できるんでしょうか? 
【沢田】そもそも、決勝までの道のりが充分キツい。曲者メキシコ、古豪イングランドなどを倒して、決勝にたどり着いたならば、既に相当の勢いがついているはず。決勝の相手がスペインでも、ドイツでもいい勝負にはなるはずだよ。
【井戸】スコア予想は野暮ですけど、あえてするなら? 
【沢田】点はあまり入らないだろうね。PK戦かもしれないよ。
【井戸】それは充分に有り得ますね。W杯決勝はなかなか点が入りません。前回も前々回も、0対0のまま延長に突入して最後は1対0でした。その一点を取るのは?
【沢田】ブラジルと言いたいところだけど、こればっかりはもう、「楽しみにしましょう」としか言えないね。


もはや鬼門、欧州勢の優勝経験国を倒せるか?

 16年6月に監督の座に就任したチッチ監督の手腕で、セレソンは南米予選突破を、全日程終了まで4試合も残して確定させた。エース、ネイマールの他にも、同監督の就任と共にレギュラーに抜擢された、ガブリエル・ジェズスやパウリーニョらは堂々の主力に成長し、6度目の世界制覇に向けて視界は良好に見える。
 しかし直近3大会でも、優勝候補筆頭か、それに次ぐ前評判で挑んだにもかかわらず優勝を逃している。
 セレソンは、06年は準々決勝でフランスに、10年は準々決勝でオランダに、14年は準決勝でドイツに敗れている。
 直近3大会全ての欧州勢との対戦成績を見ても、中堅のクロアチアに2勝しただけで、通算2勝1分4敗と、「最近W杯では欧州勢を苦手にしている」と言われても、反論できない成績だ。
 今年のロシア大会でも準々決勝以降は欧州強豪との連戦が予想され、それを三つ続けて勝たなくては、世界制覇には届かない。
 チッチの率いるセレソンは、これまで欧州チームとは1試合しか行っておらず、その試合も0―0の引き分けだった。(17年11月14日イングランド戦)
 今年3月、本番前の最終テストでもロシア、ドイツら欧州勢と親善試合を行うセレソンは、2試合とも勝利を収めて良いイメージで本番に入りたい。


泰然自若のチッチ、王道の世界制覇なるか?

セレソンを率い6度目の優勝を狙うチッチ監督(Lucas Figueiredo/CBF)

セレソンを率い6度目の優勝を狙うチッチ監督(Lucas Figueiredo/CBF)

 グループリーグ組み合わせ抽選の結果にも、チッチ監督は、「相手は関係ない。対戦相手がどこになるかという、自分ではどうにもならないことよりも、私が自分でどうにかできることに集中させてくれ。それは、選手の状態をチェックし続ける事。対戦相手を少しでも詳しく分析する事。次回の代表招集の際に少しでも良い内容のトレーニングをする事。広いロシアを移動して戦うのだから、少しでも効率の良い選手、物資の移動方法を考える事だ。私はほら吹きではないから、『絶対に優勝する』と約束はしない。ただし、全力を尽くし、さらに強くなったセレソンを率いて優勝をめざして戦う」と実直な物言いに終始した。
 セレソンは1994年、2002年と優勝しているが、どちらも2人(94年ロマーリオ、ベベト)、または3人(02年ロナウド、ロナウジーニョ、リヴァウド)の強力なFWに攻撃を任せて、全体の意識はむしろ守備寄りのチームだった。
 駆け引きを好まず、オーソドックスなプランでチームを作り、正々堂々と敵にぶつかって制圧するチッチのスタイルで優勝をしたら、それは3度目の優勝を飾った1970年以来の、王道を行く、本来のブラジルらしい勝ち方での優勝となるかもしれない。