『抵抗と創造の森アマゾン 持続的な開発と民衆の運動』(小池洋一、田村梨花共編、現代企画室)が、昨年11月に日本で刊行された。
本書は、アマゾン熱帯雨林で進行する深刻な森林破壊の現実と、それに抵抗し、社会経済の新たな在り方を展望し創造的活動を展開する民衆の動きに焦点を当て、消費主義に替わり得る持続的開発の在り方を展望した労作だ。
アマゾンには、横断道路が建設された60年代から本格的な開発の波が押し寄せた。70年代以降は鉱業、農牧開発が進み、それに伴う鉄道建設や電力開発等で大規模な森林破壊が起こった。
90年以降、社会民主党、労働者党政権の下、環境政策が強化された。だが、その保全政策は後退し、減少傾向にあった森林破壊面積も15年に増加に転じた。テメル政権下では、それを反故にする動きが加速しているという。
そんななか、最新のデータと現地調査に基づき、アマゾンの環境問題の詳細に踏み込んで現実を伝えると共に、特に先住民など現地で暮らす民衆の動きに着目し、10章立てで紹介している。
アグリビジネスと闘い生態との共生を目指すアグロエコロジーや、森の恵みを活用する採取経済や森林農法。持続的経済を提案する先住民運動、土地なし農民運動の大規模農牧畜への抵抗、デザインや公正取引により生産物の価値を高める運動や、人々の生活と社会を強化するコミュニティ教育などが取上げられる。
序章では、アマゾンの民衆運動について「市場経済の根底からの変革、すなわち労働や自然を含めあらゆるものを市場取引の対象とする経済を揚棄し、自然と人間の共生や連帯を目指す運動である」と総括し、持続的開発の在り方を一考するヒントとなりそうだ。
全319頁。定価2600円で販売中。
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