米国の債権格付機関、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が11日、ブラジル国債(ソブリン債)の格付をBBからBB-(マイナス)に下げたと、12日付現地紙・サイトが報じた。
S&Pをはじめとする格付機関は、政府の財政状況、信用度に応じて、国債の元本や利息が確実に支払われる否かを検討してランクを付ける。
S&Pの格付はAAAからDまで、22段階ある。AAAからBBB-までの上位10段階は、「投資適格級」とされ、それ以下は「投資不適格級」とみなされる。
ブラジルは2015年9月に投資不適格級のBB+に転落しており、16年2月にはBBへと、もう一段階下げられた。今回の格下げはテメル政権発足以来、初めてだ。
ブラジル国債は投資適格級の最低ランクから3段階も離れたことになり、ブラジル企業が国外金融市場において資金調達を試みる際も審査や利息の面で不利な条件を強いられる。
S&Pは11日、「改革の遅れと政治の不安定さが、ブラジル国債の主要な弱点。テメル政権は多くの分野で前進しているが、期待されたレベルには至っていない」と発表した。その一方、格付と共に出される「展望」は、「ネガティブ」から「安定」に変更された。
ブラジルのメディアでは、「昨年の内に社会保障制度改革を行えなかった事が主な要因」との見方が支配的だ。
エンリケ・メイレレス財相は、昨年12月にS&P、ムーディーズ、フィッチの3大格付会社の代表者と会合を持ち、ブラジルの財政状況の改善をアピールし、国債格下げを待ってくれるよう頼んだが、それも功を奏しなかった。
S&Pは、選挙も近くなり、ブラジルの政治家たちは政治的思惑を優先させて、社会保障制度改革への賛成票が集っていない状況を見て、格下げは不可避と判断した。
エンリケ・メイレレス財相は、「社会保障制度改革が成立すれば、格付け見直しもありうる。国内の経済成長も、再度の格上げを後押しするはずだ」と語った。
これを受けて、元中銀幹部のアレシャンドレ・シュウォルツマン氏は、「格下げが議員たちに社会保障制度改革の重要性を認識させ、逆に2月の成立を後押しするかもしれない」と語った。
また、元中銀総裁のグスタヴォ・ロヨラ氏は、「昨年内に社会保障制度改革を行えなかった時点で、この結果は予想出来ていた」と語っている。
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