【既報関連】ブラジル連邦政府は19日、政権の最優先課題として、一昨年末より取り組んできた社会保障制度改革を断念し、即座に15項目の優先経済政策集を発表したと、20日付現地各紙が報じた。
社会保障制度改革の断念は、16日にリオ州治安部門の直接統治令(IF)が出された事による。IFが出されているうちは、いかなる憲法改正手続きも行えない。社会保障制度改革は憲法改正案だ。
テメル大統領は「IFを一時停止することで、社会保障制度改革の採決は可能」とIF発令時点で語っていたが、実際には難しいことが判明し、19日にカルロス・マルン大統領府総務室長官が「社会保障制度改革の手続きは一時的に中断する」と語った。
社会保障制度改革の挫折のダメージを少しでも払拭するために出された、15の優先政策の発表会見には、エンリケ・メイレレス財相、ジオゴ・オリヴェイラ企画相、エリゼウ・パジーリャ官房長官、ロメロ・ジュカー上院政府リーダーが顔をそろえた。だが11政策に目新しいものはなく、既に発表され、議会内承認手続きなどの過程にあるものの焼き直しばかり。
焼き直しの11政策には、各企業が社会保障費を国家に納めるときの仕組みの変更(レオネラソン)や、クレジット債務返済の滞りがない優良債務者への優遇策(カダストロ・ポジチーボ)、設計段階での不動産購入契約の破棄に関する法律、電力公社エレトロブラス社の民営化の他、財政責任法の改正や入札法の改正、国営企業経営回復・改善計画、公務員の給与上限の設定などが含まれる。
「15の優先課題」で新政策といえるのは、中銀の独立性強化、社会統合基金と社会保険融資納付金(PIS/Cofins)の改正、電気通信総合法の実用化、ブラジル政府ファンド廃止の四つだ。
メイレレス財相は、PIS/Cofinsの改正は税制改革の一部で、国税庁との詰めの調整が残っているだけとした。社会保障制度改革に最も力を入れて取り組んできた同財相は、「15の優先課題は、短期的なインパクトでは、社会保障制度改革よりも大きい」と語った。