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日系代表4団体が法務省に意見=「四世にも三世と同じ条件で」=(2)

 (3) 私たちは、1980年代には、ブラジルの日系社会コミュニティはブラジル社会に吸収されて消滅するのではないかという大きな懸念を持っていました。日系人は他の人たちと同じようにブラジル社会の一員となって、日本との関係は細々としたものになって行くだろうと考えていました。数年のうちに、そういったことが起きる可能性があるとまで考えていました。
 しかし、1980年代の後半から、多くの日系ブラジル人が日本に行くようになって事情は一変しました。1990年の入管法改正によって日系三世が定住者として日本に行くことができるようになって、1991年には8万4千人の日系人がまるで洪水のように日本に押し寄せました。30年の間に60万人近くの人々が日本とブラジルを行き来し、ブラジルの日本文化は再び力強さを取り戻すことになりました。
 私たちはブラジルの日系社会コミュニティと日本との間の交流を、今後も継続したいと考えています。日系社会にはすでに、四世と五世が成人として加わっています。2005年には日系六世の誕生が報告されております。全ての世代を合わせると、現在ブラジルにはおよそ190万人の日系人が暮らしていると考えられます。日系社会コミュニティにとって、日系人定義の拡大は、緊急の課題なのです。
 (4) 私たちは今回の「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件の一部を改正する件(案)」が四世の日系人に対して、日本とブラジルの文化の懸け橋となる契機となる制度を創設するものだと理解しています。
 しかしながら同時に、その要件が厳しすぎると感じています。
 例えば、本改正案の法務省告示別表第十の九号は受入れ枠を定めることを想定しており、参考資料1の「日系四世の更なる受入れについて(案)」によれば年間4000人程度の受入れ枠を想定しています。
 しかしながら、例えば在日ベトナム人の数だけ数えてもここ2年で10万人以上増加しています。在外同胞である日系人の数に受入れ枠を設ける必要があるとは思えません。
 後述のように厳しい要件が設けられていることからすれば、受入れ枠が機能するかどうかについては不透明な部分がありますが、私たちは受入れ枠を設ける必要はないと考えています。
 また、本改正案の法務省告示別表第十の八号には「基本的な日本語を理解する能力を有していることを試験により証明されていること」と定められ、参考資料1の「日系四世の更なる受入れについて(案)」によれば日本への入国時に求められる日本語能力として日本語能力試験4級程度を想定しています。
 しかしながら、EPAに基づきインドネシア・フィリピンから来日する看護師、介護福祉士に求められる日本語能力は5級です。しかも、事前に6か月の訪日前日本語研修を受け、その後に5級に達していれば足りるのです。日本で暮らし、日本を知ることを希望する日系四世の若者に、入国前の段階でこれよりも高い水準の日本語能力を要求する必要があるでしょうか。
 試験においては、会話だけでなく、筆記の能力が要求されます。家庭内で日本語をある程度理解できるようになった四世であっても、日本語教育を受ける機会がなければ日本語能力試験4級の取得は困難です。私たちは入国時の日本語能力要件は撤廃するか、引き下げる必要があると考えています。
 さらに、本改正案の法務省告示別表第十の二号には「申請時の年齢が十八歳以上三十歳以下であること」と定められています。
 しかし、日系社会では2005年にすでに六世が誕生していて四世世代といっても孫を持つ人もいます。サンパウロ人文科学研究所の「ブラジルに於ける日系人人口調査報告書 1987・1988」は四世比率を12・95パーセントとしていて、当時の推計人口にこの比率を掛けると最大約15万人の30歳以上の四世が存在することになります。
 かれらに日本を知る機会が全く与えられないということが平等な取扱いであるとは思えません。転職が当たり前に行われているブラジルでは30代の学生も珍しくありません。本制度は県費留学制度を利用して四世が母県で研修を行う際にも有用な制度ですが、本改正案の内容では30歳を超えると利用できなくなってしまいます。年齢制限についても是非とも撤廃をお願いします。(つづく)