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PTの危機に、どうするハダジ?

ハダジ氏(Lula Marques/AGPT)

ハダジ氏(Lula Marques/AGPT)

 10月の大統領選に向け、労働者党(PT)が党史上最大級の危機を迎えている▼ルーラ元大統領が1月に行なわれた収賄裁判の第2審で有罪となり、大統領選の出馬がかなり厳しくなっていることは既報済み。それに追い討ちをかけるように、ルーラ氏断念の場合の第1代理候補、ジウマ政権時の官房長官ジャッケス・ヴァギネル氏までもが、バイア州知事時代の収賄疑惑で捜査を受けた。しかも今回は、ルーラ氏の捜査以上に明確な証拠も次々と見つかっているため、仮に裁判で有罪にならずとも、有権者への印象はかなり悪くなる▼そこでPTとして残された切り札となると、もう、フェルナンド・ハダジ氏しか残っていない状況だ▼ハダジ氏と言えば、2013年から16年まで、「支持率の低いサンパウロ市市長」として知られ、16年の再選を狙った選挙でジョアン・ドリア氏に大敗したイメージがある。ルーラ氏のかねてからのお気に入りとして知られ、現在、ルーラ氏がめげずに行なっている大統領選のキャンペーンでも参謀役をつとめている▼ハダジ氏に関しては、PTの最大のライバル、民主社会党(PSDB)のカルドーゾ元大統領も「他党の人間ではあるが、良い政治家だ」と評価するコメントを2月に残しているほどだ▼ハダジ氏自身にも12年のサンパウロ市市長選でのスタッフによる不正が噂されてはいるものの、本人には至って「誠実で実直」なイメージがある。その面を支持する声もたしかにあり、パラナ・ペスキーザという団体が行なった調査では「ルーラ氏の代わりで期待する人は」との問いに20%がハダジ氏の名前をあげたほどだ▼そうしたこともあり、「ハダジ氏をルーラ氏の代わりに」との声もあるにはある。だが、実績不足を指摘して「それでは大統領選には勝てない」とする声もある▼そこでこういう案もある。それは、現在の左翼候補で、ルーラ氏以外なら、マリーナ・シウヴァ氏(レデ)と並んで人気のある、02、06年の大統領選3位でルーラ政権時の閣僚のシロ・ゴメス氏の副候補でハダジ氏がつき、シロ氏の民主労働党(PDT)とPTで大きな左翼連合を作る、という案だ▼だが、「これも難しいのでは」とする声もある。それは、「左翼勢力の中で常に一番でないと気がすまないPTが、このような下手の案を受け入れられるか」というものだ▼この点、ルーラ氏本人は、自身の政権時に元来中道右派の、現テメル政権財相でもあるエンリケ・メイレレス氏を財相で重用し続けたり、本来政敵のはずの民主党(DEM)のロドリゴ・マイア氏への下院議長選への投票を呼びかけたり、合理的で柔軟な考えを持てる資質がある人だ。だが、ルーラ氏が仮に良くても、「PTのプライド」にこだわりがちな人たちがそれをどう受け止めるか。ましてや現PT党首のグレイシ・ホフマン氏はラヴァ・ジャット作戦での腐敗イメージも強く、さらにベネズエラのマドゥーロ政権の支持も行なっているような人物。そんな彼女が党首選挙で圧勝するのがPTの現実だ▼これも以前から言われていることだが、ハダジ氏がPTの穏健でクリーンな勢力を引き連れて、新政党を立ち上げるのも良いのではないか。彼がこれから政界でリーダー役を期待されるのならば、PTのイメージは重荷になるようにも思えるが、それは2022年以降の選挙での話か。(陽)