ブラジル日本移民110周年記念曲『ありがとうブラジル』をコロニア歌手・平田ジョー昭夫さん(50、三世)が制作している。この曲は、7月中旬に開催される各地の移民110周年記念式典で歌われるが、なかでも7月21日に入植百周年式典が開催されるプロミッソンへの特別な思いを語った。
プロミッソン市のゴンザガ区には、38年に日本移民が建設した最初のカトリック教会「クリスト・レイ教会」がある。幕末に大規模な基督教徒迫害が起こり、社会的圧力を受けて移民した、福岡県大刀洗町出身の隠れキリシタンの子孫が大半を占めた場所だ。
同地区には、ジョーさんの祖父・キゾウさん、父・ニコラウさんも居住し、同教会建設に汗を流した。大刀洗町にある今村教会堂の図面を基に複製されたとされる教会の建設にあたっては、教会横に煉瓦を焼くための窯を開き、そこで作られた約15万個のレンガを積み重ね、信者の労働奉仕により完成したという。
同地区で資本を蓄えた後、平田一家はパラナ州アラポンガス市に土地を購入し、珈琲栽培に従事。クリチバ連邦大学を卒業した父・ニコラウさんは、会計士となりマリンガ市に移り住み、そこでジョーさんは生まれた。
コロニア歌手として全伯各地を渡り歩くジョーさんだが、プロミッソンを初訪問したのが5年前。同地出身者子弟として歌手として活躍する功績を称え、プロミッソン市が名誉市民章を授与。そこで、初めてクリスト・レイ教会を見たという。
ジョーさんは「父から話は聞いていたが、実際に見て感激した。あの時代にこんな立派な教会を一つ一つ皆の手で作り上げたとは」と当時を振返る。その1ヶ月後、息子の成長を見届けたかのように、ニコラウさんは息を引き取ったという。
94年にNHKのど自慢大会チャンピオンに輝き、当地でプロ歌手として活動を開始してから今年で20年を迎える。
「移民の故郷と称されるプロミッソンは、祖父や父にとっても思いで深い場所。今でも自分の胸のなかに生き続けている」と語り、「プロミッソンで歌うのは、これが初めて。特別な思いがある」と意気込んだ。
記念曲『ありがとうブラジル』は、日伯両国への感謝を込めて、日ポ両語で作詞。5月末迄に完成を見込むビデオ・クリップは、尺八、太鼓、エスコーラ・デ・サンバ、オーケストラ、踊りなど、総勢200人以上が参加する豪華なものとなりそうだ。この曲は、7月19日のマリンガー市、20日のサンパウロ市、21日のプロミッソン市など、各地で開催される移民110周年式典で、使用される予定だ。
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プロミッソン入植百周年祭典委員会(前田ファビオ実行委員長)は、7月22日の入植百周年式典に、プロミッソンから巣立っていった同郷者やその子弟を招待する予定。サンパウロ市在住者も多いため、そのための名簿作成に奔走している。ノロエステ連合日伯文化協会の安永信一会長は、「我々が今あるのは先人のおかげ。祭典は全ての同郷者を称えるためのもの。名簿の登録に協力をお願いします」と呼びかけている。該当する方は、氏名、住所及び連絡先を同委員会(promissao100@outlook.com, fazendamaeda@hotmail.com)もしくは、安永修さん(14・99716・5367)、和恵さん(14・99701・6765)まで連絡を。