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ブラジル人がオスカーを受賞するのはいつ?

アカデミー賞を報じるフォーリャ紙

アカデミー賞を報じるフォーリャ紙

 全世界の映画ファンにとって毎年楽しみなアカデミー賞(ブラジル風に言うなら「オスカー」)の授賞式が4日、行なわれた▼今年は中南米勢にとって記念すべき1年だった。作品賞と監督賞が米国のメキシコ移民のギレルモ・デル・トロ監督の「シェイプ・オブ・ウォーター」、アニメ部門がメキシコを題材とした「リメンバー・ミー」、そして外国語映画部門がチリ代表の「ナチュラル・ウーマン」が受賞したのだ。ブラジルからは、「関係者」として2人のノミネートはあったが、無冠で「蚊帳の外」で終わってしまった▼それにしても、「ブラジル映画人へのオスカー像授与は一体、いつになるのだろう?」。その答えが、少なくとも近年になりそうな気がしないことを考えるとガッカリもする▼米国以外の映画人にとってオスカー受賞の最大のチャンスは外国語映画部門なのだが、ブラジルは1999年以来、ノミネートされていない。その一方でチリとアルゼンチンはこの10年で2度ノミネートされている▼中でも、躍進著しいのはチリだ。2013年にピノチェト政権末期の民衆の抗議運動を描いた「NO」で注目を浴びたパブロ・ラライン監督は、2016年にハリウッドでジャクリーン・ケネディの伝記映画「ジャッキー」を監督し、ヒロインを演じたナタリー・ポートマンはオスカーの主演女優賞にノミネートされた▼また、今年「ナチュラル・ウーマン」で同賞を受賞したセバスチャン・レリオ監督にも、自身のチリでのヒット作のハリウッドでのリメイクの話などが舞い込んでいる。それに加えて、「ナチュラル・ウーマン」では、主演を務めた性転換女優ダニエラ・ヴェガの存在が世界的に注目を浴びている状況だ▼その一方で、この数年、ブラジルではどうだったかと考えると、良い作品もなかったわけではない。「キ・オラス・エラ・ヴォウタ」(2015年)、「アクエリアス」(2016年)は国際的にも高い評価を得た作品だった。ただ、前述のチリの作品と比べてみると、ブラジル作品の場合、どうしても「ブラジル社会」そのものを映し出そうとしすぎて、国際的な普遍性に欠ける傾向があるように、少なくともコラム子には思える▼何も「性転換女優を見つけてこい」とまでは言わないが、もう少し、国籍に関係なく、どこの国の人でも分かる題材で映画を作ってみてはどうかと思う▼ただ、そうした「映画賞」を意識した映画の製作にブラジルが協力的か、となると甚だ疑問でもある。現在、ブラジルでは国内映画はグローボ局傘下の「グローボ・フィウミス」が牛耳っている。ここが製作するものの多くが人気お笑いタレントが主演のドタバタ・コメディ。これを続けている限り、あまり多くは望めそうにない気がする▼ブラジル映画にも10数年前までは良い流れがあった。「セントラル・ステーション」のバルテル・サレス、「シティ・オブ・ゴッド」のフェルナンド・メイレレス、「エリート・スクワッド」のジョゼ・パジーリャがそうだ。でもネットフリックスのドラマ「ナルコス」で成功しているパジーリャはともかく、サレス、メイレレスが失速気味なのも悔やまれる。スケールの大きさで勝負する若手の監督の出現に期待したいところだ。(陽)