【既報関連】2月に出されたリオ州治安部門への直接統治令(IF)以降、連邦政府と議会は国民の支持を獲得し易い治安政策に傾き、経済政策が手薄になっていると14日付現地紙が報じた。
現地紙は、遅々として進まない経済諸政策を、政府、議会、司法当局のどこで何が止まっているか分類している。
官房長官の下(政府)で停滞しているのは、電力公社エレトロブラス(EB)民営化、国家公務員機構の改革などで、議会の審議が進まないのは、投資ファンドへの課税強化、債務返済の滞りがない優良債務者への優遇策(カダストロ・ポジチーヴォ)などだ。最高裁の判断待ちなのは、国家公務員の給与調整の見送り、高給国家公務員の社会保障費負担率の増加問題などだ。
ブラジル紙はまた、経済政策停滞の理由は「企業、公務員、金融市場からの抵抗にある」と指摘しつつ、より重大なのは、「政府の焦点が治安関係に移り、国家財政の改善には有益だが、国民受けの悪い政策に議員が真面目に取り組まないこと」だと批判している。
投資ファンドへの課税強化の暫定令などは、金融界からの圧力でほぼ有名無実化してしまった。
国家公務員の給与調整見送りに関しては、リカルド・レヴァンドフスキ最高裁判事が、「今年も給与調整を行うべし」との予備判決を出した。総弁護庁は12日、同件の審理を優先的に進めるように要請している。
治安省設立に向けた手続きや、ロベルト・バローゾ最高裁判事がテメル大統領の銀行口座情報開示を命じたことによる両者の対立の緩和に、政府の法務部門は忙殺されてきた。
リオ・カトリック総合大学経済学部のジョゼ・カマルゴ教授は、「EB民営化は何よりも重要」とし、政府がEB民営化やカダストロ・ポジチーヴォ成立に優先的に取り組むことを支持した。
しかしながら、テメル大統領はまだ、EB民営化に不可欠な、EBを国家民営化計画に含めるための大統領令を出していない。政府の働きかけを受け、下院は13日にEB民営化検討特別委員会を設置した。委員長と報告官は採決を急ぐ与党議員から選ばれたものの、議会内の反対は根強い。
そんな中、テメル大統領は13日に、「9月頃までにリオ州の治安が戻れば、その時点でIFを終了させ、年末までに社会保障制度改革を行うこともできる」と語った。ロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)も同日、「IF発令中は本会議での(社会保障制度改革を含む)憲法補足法案採決は出来ない。だが、憲政委員会や特別委員会での審議や意見書承認は可能だ」との見解を表明した。