ミシェル・テメル大統領(民主運動・MDB)は、中等教育(高校)教程の4割を遠隔授業で履修出来るようにする案を持っていると、20日付現地紙が報じた。
昨年2月に中等教育改革法の成立する過程において、遠隔授業の是非について意見が割れ、結果的に遠隔授業は認められなかった経緯がある。
中等教育改革法の成立により、教育省は全国中等教育カリキュラムガイドライン(DCN)を改定する必要が生じた。DCNの改定を行ったのは、教育省の内部機関、全国教育審議会(CNE)だ。
CNEは、「教育機関で行われる内容は全て遠隔授業が可能」とする提言もDCNに盛り込んだ。もしこれが議会承認されると、週5日の授業の4割を遠隔で受け、週に3日だけ通学すればよいケースも発生する。
遠隔授業の支持者からは、「人的、物的両面で新しい教育資源を試すことができる」との声があがってはいるが、「公教育との格差が拡がりかねない」との不安も専門家からは出ている。
現在ブラジルでは、690万人が公立校で中等教育を受けている。15~17歳の中等教育適正年齢全体の14・6%にあたる150万人は、中等教育に進んでいない。
中等教育改革法は、カリキュラムの6割は共通科目を学習し、残り4割は「言語」「自然科学」「人文科学」「数学」「技術教育」の5科目から一つを選んで履修できると定めている。CNEの提案では、選択科目も遠隔履修を認めている。
ただし、現在は、5000を超える国内全ての市の半数以上では、公立校では選択科目が一つしか選べず、改革法の実現は困難に直面している。遠隔授業はこの問題の解決の糸口になる上、教員不足解消の一助としても期待されている。
DCN改定案は、今月6日にエドゥアルド・デシャンCNE会長らの手によって提出された。デシャン会長は、「まだ初等教育(小中学校)に関する議論も不足している。初等教育と中等教育との間の連携も整える必要がある」と語った。
また、先端技術を使った教育に関する研究を行っている、バイーア州連邦大学のネルソン・プラット教授は、「遠隔授業は、ブラジル政府が、若者の教育に関する責任、学校施設への投資を行うという責任を放棄するもの」と厳しく批判している。