テメル大統領は28日、連邦貯蓄銀行(Caixa)が各州、市などの自治体に総額約200億レアルの融資を行うことを事実上認める内容の、総弁護庁(AGU)作成の書類に署名したと、28、29日付現地各紙・サイトが報じた。
この融資では、自治体が担保として州加盟ファンド(FPE)や市加盟ファンド(MPE)の割り当て金を使うことを認めている。EPEやMPEは、国が集めた資金の一部を州や市が受け取る、交付金の一つだ。
Caixa経営審議会や連邦会計検査院(TCU)は、「EPEやMPEを担保として融資を行うと、Caixaが経営面でリスクを負う可能性が高い」と考えている。経営審議会はまた、「FPEやMPEは連邦税が原資だから、それを融資の担保にするのは憲法に反する」と判断している。
テメル大統領が署名したのは、「FPEやMPEの割り当て金は税金が原資ではないので、融資は認められる」というAGU作成の意見書だ。
本来、Caixaに約200億レの融資を行う余力はなく、FPEやMPEが担保では焦げ付きの危険性も高まる。EPEやMPEは国庫庁が保証する融資とは違い、債務不履行に陥った場合に返済を受ける保証がないからだ。
それだけでなく、FPEやMPEを担保とする融資については、自治体に融資する銀行に対して、中銀が返済の確実性を厳しく審査することにしている。CaixaはFPEやMPEが担保の融資オペレーションは焦げ付きが起きる危険性が高いことを認め、より厳しい審査を行うようになっており、経営審議会によるチェックも行う。なお、Caixa経営審議会の会長は、アナ・パウラ・ヴェスコーヴィ国庫庁長官だ。
10月に総選挙を控える中、政府は政治的意図を裏に持って、地方自治体への融資を行おうとしている。連邦検察庁とTCUの検事を兼任する、ジュリオ・マルセロ・デ・オリヴェイラ氏は、「FPEやMPEの原資は、工業製品税(IPI)や所得税など、紛れもなく税金だ。今年は選挙の年で、公共事業費を求める国民の声と、それに応えたい自治体の思惑は国中に広がっている。政府はその声に応えるために財政上の原則より、政治の論理を優先させている」と、政府の動きを強く批判している。