ルーラ元大統領が逮捕逃れのために申請した人身保護令の審理前夜の3日、ラケル・ドッジ連邦検察庁長官が、「司法界の対応の遅れは司法制度の欠陥」との見解を表明した。
3日の検察庁高等審議会(CSMP)での発言は、「『無罪の推定(無実である可能性と上告する権利を認める事)』は世界中で認められている大切な権利であり、ブラジルでも尊重されるべきだが、4回の裁判を経なければ刑が執行出来ないという事になれば、司法制度は形骸化する」との見解を示す過程で行われた。
「無罪の推定」は世界各国で認められているものの、これ以上は上告手段がないという段階(最高裁での上告審結審)まで自由の身でいる事を望んでの人身保護令適用申請は、この権利の乱用であり、司法制度を形骸化させるとの主張は、明らかに、4日に行われるルーラ元大統領の人身保護令審理を念頭に置いたものだ。
元大統領は1月24日に第4地域裁で行われた第2審でも有罪判決を受け、同裁での異議申し立てに関する審理が終了した時点で刑執行と言い渡された。
ルーラ氏は第4地域裁に上告すると共に、高等裁や最高裁に人身保護令の適用申請も出した。
第4地域裁での上告審は3月26日に行われ、3人の判事が全員一致で上告を棄却したが、3月22日に行われた最高裁での審理で人身保護令そのもの審理が4日に延期されたため、人身保護令の審理終了までは逮捕されないとの暫定令が出ており、ルーラ氏への刑執行は見送られた。
4日の最高裁では、人身保護令に関する審理だけが行われる事になっており、第2審でも有罪となった場合は即座に刑を執行する事が出来るという、16年10月の最高裁判決に関する審理ではない。
だが、4日の審理で元大統領への人身保護令が適用され、刑執行を免れる事態が起きれば、第2審で有罪になったために刑の執行が始まった他の既決囚らからも人身保護令適用申請が相次ぐ事は目に見えている。
これが故に、2日には判事や検事は2審後の刑執行を求める署名を、元大統領弁護団を含む弁護士らが2審後の刑執行に反対する署名を、各々、最高裁に提出する事態も起きた。
ドッジ検察庁長官の発言は、物的証拠などを詳細に分析して判決を下す1審と2審が、「無罪の推定」のためにも十分な時間と手続きを経て行われていると理解した上で行われており、最高裁まで上告する権利は残っていても、刑の執行を妨げないとの見解に基づいている。
世界でも類を見ない大型汚職を摘発しているラヴァ・ジャット作戦の今後を占う意味でも、大きな意味を持つ裁判の行方は、ブラジル中の関心事となっている。(3日付G1サイト、アジェンシア・ブラジルより)