「ブラジルにも蝉はいるよ!」と実物を持ってきてくれたのは、サンパウロ市近郊モジ・グアスーのシャッカラに住む南雲良治さん(82、新潟県)だ。「確かにね、日本の蝉ほど煩くないかな。でも夏の間シャーシャーと鳴いてるよ。これはウチの裏庭の木にとまっていたやつ。たまたま手が届くところにいたから捕まえた」とのこと。
以前から当地俳句界の一部には「ブラジルには蝉がいない」という説がある。要は「蝉しぐれ」という季語が使えるかどうか、という話だ。「蝉しぐれはブラジルでは聞けない」という主旨の俳句が俳壇に載るたびに、南雲さんは「そんなことないのにな~」と首をひねっていたという。
捕まえようにも、なかなか手に届くところに蝉が止まらず、この機会を待っていたのだとか。「これで確かでしょ! ブラジルにも蝉はいるからね」と南雲さんは念を押した。
――蝉しぐれ夏と論争ともに過ぎ――
(深)