ブラジル日本商工会議所(松永愛一郎会頭)は「3月定例懇親昼食会」を先月16日、市内ホテルで開催し、2本立てで講演会を行った。
「これまで社会の中枢を担ってきたエスタブリッシュメント(既存体制)に対する揺さぶりが先進国、途上国で起きている」と世界情勢を俯瞰したのは、国際公共政策研究センターの田中直毅理事長だ。「2018年世界経済のリスク要因」をテーマに講演した。
たとえば独では、昨年の連邦議会選挙で極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が第3党に躍進。戦後、西独を担ってきた既存体制に陰りが見えてきた一方、仏では新勢力であるマクロン政権が誕生し、困難と見られていた労働改革を断行した。
ロシアの勢力圏拡大に対して、EUでは「米国の中長期的な共同戦線を期待できない。統一軍を作ろうという動きがでている」といい、「トランプ政権の誕生による米国の変質がEUを変えつつある」と指摘。「EUの主導権は独から仏に変わりつつある」として、世界情勢の変化ついて解説した。
そのほか、株式会社国際協力銀行リオ駐在員事務所の櫛引智雄首席駐在員が、「日本の製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」について講演した。
これは日本の製造業企業の海外事業展開の現況や課題、今後の展望を把握することを目的としたもの。全体動向に加えて、ブラジル、メキシコに関する調査結果について解説した。
調査報告によれば、海外生産・売上比率が増加傾向にあるなか、13年以降の経済危機の煽りを受けて、回答企業のブラジルにおける収益満足度は著しく低下。海外事業展開の見通しも「強化拡大姿勢は年々下がり、現状維持といった状況だ」と見通した。
一方で、中長期的な有望国として17年もブラジルは10位に。「景気後退により順位を下げても、依然として重要な市場として評価されている」と指摘し、「治安・社会情勢の不安が年々課題視されている」と指摘した。
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商議所昼食会では、パラナ州移民110周年祭典委員会の西森ルイス祭典委員長(連邦下議)が、7月19、20、21日に同州マリンガー市で開催される「移民110周年エキスポ」について紹介し、進出企業に展示会への参加を呼びかけた。2月末から3月初旬にかけ、ジャイール・ボウソナーロ連邦下議とともに訪日した西森祭典委員長は、その後も日本に滞在して企業に協力を呼びかけ、新たに2社の参加が決定したという。展示会には、およそ40社の参加が見込まれるという。「このエキスポは、次世代の日系社会を継ぐ若い世代を育成するという一点に尽きる。将来、こういうところで働きたい、こんなことをしたいという夢を、展示を通じて子供たちに持ってもらえれば」と意義を語った。