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NTTブラジル30周年=W杯で高画質通信を実現=「新たな価値を提供し続ける」

矢澤社長

矢澤社長

 NTTブラジル(矢澤吉史(よしもと)社長)は先月27日、設立30周年式典をサンパウロ市内の会場で開催した。同社はブラジルで通信事業の一翼を担い続け、新たな技術やサービスの導入に取り組んでいる。就任7年目となる矢澤社長にこれまでの歩みや、今後の展望を取材した。

 式典には野口泰在聖総領事、進出日系企業の代表者など約100人が出席した。矢澤社長はまず、「この30年間は皆さんに支えられてきた歴史」と謝意を述べた。
 同社は1987年にNTTコミュニケーションズ(以下、NTT)の子会社として設立された。NTTは海底ケーブルなどの通信インフラを全世界で運用し、各国のインターネット接続事業者同士をつないでいる。
 99年から企業に対して各国間の通信サービスの提供を開始。当初は進出日系企業のニーズに応える形で進出したが、3年ほど前からブラジル企業に提供するサービスが収益の半分を占めるようになった。
 矢澤社長が一大事業に挙げたのが、2014年サッカーW杯ブラジル大会で、初めて日伯間の「スーパーハイビジョン通信」を実現したことだ。
 従来の衛星通信では約3、4秒の遅延が発生するが、同社独自の通信インフラを使うことで遅延を1秒未満に縮めた。IP伝送と呼ばれるこの技術は衛星放送に比べてコストが安く、大容量の映像データを送信できる。
 日本のTBSテレビが番組放送に活用し、中継映像を届けた。そのことが高い評価を受け、2016年のリオ五輪でも競技映像伝送のために同じ技術が用いられている。
 矢澤社長が2012年に就任して以降、同社は収益を拡大し続けている。その要因を「ブラジルではグローバルな通信サービスの需要が急速に高まっている」と説明。また「国土が広いため通信環境が十分整備されていない地域があるし、人口が多いのでさらなる需要の増加が見込める」と話した。他にもNTTグループ内で技術や顧客情報を共有し、事業の効率化を図ったことなどが業績好調に寄与したという。
 今後の展望を「スーパーハイビジョン通信のような新しい技術・サービスを持ち込みたい。今後も他社がやっていないことで新たな価値を提供する」と力強く語った。
 野口総領事は挨拶で同社のジャパン・ハウスへの貢献について言及。同社の大島祐斗さんは「施設内のITに関するサービスを提供している。従業員がITトラブルに時間を取られて本来の業務に集中できなくなることを避けるため協力している」と説明。日系社会とのつながりについて「従業員の7割ほどが日系人。日本の精神性、例えば品質を追求する姿勢などが当社の方針にマッチしています」と話した。