サンパウロ市セントロの24階建てのウィルトン・パエス・デ・アルメイダビルで、1日の午前1時30分頃に火災が発生し、1時間半後に建物全体が崩壊したと1、2日付現地各紙・サイトが報じた。
ガラス張りの同ビルは1968年に建てられ、92年にはサンパウロ市歴史・文化・環境遺産保存審議会(CONPRESP)により文化財に指定された。2003年に連邦警察が移転すると、その後は管理責任者も転々とし、近年は不法占拠状態にあった。
ビルは5階から出火。建物の内部は板で仕切られ、通路にはゴミなども置かれていた。その上、ガスボンベなども持ち込まれていたため、およそ1時間半後には全体に火が回って崩壊した。燃え盛る炎と建物崩壊により、周辺のビルや建物にも、延焼や壁にひびが入るといった被害が出た。延焼被害が最も大きかったのは、ビルの左隣にある福音派ルーテル教会で、建物の90%が損壊した。
出火原因はまだ調査中だ。消防は不眠不休で瓦礫を冷やす一方、瓦礫を取り除きながらの生存者の捜索、救出活動を続けている。消防は2日午前、「ビルに住んでいた49人の行方が判明していない」と発表した。ただし、この49人全員が火災発生当時、ビルの中にいたかどうかはわかっていない。
ビル崩落の瞬間の映像は1、2日に何度もTVで放送された。特に、9階から助けを求めていた男性が、救助される寸前にビルが崩壊した映像は国民に大きなショックを与えた。
消防によると、崩壊したビルには少なくとも146家族、372人が不法に住み着いていた。サンパウロ市役所はビル崩壊後、320人を「事故により住処を失った」と認定した。その内の40人が福祉の支援を求めた。ビルに住んでいたが、火災の難を逃れた人は、ホームレスの人の住宅問題に取り組んでいる団体、LMDに家賃を払っていたと語っている。
サンパウロ市のブルーノ・コーヴァス市長は1日午後、「サンパウロ市内には不法占拠されている建物が少なくとも70あり、3300人が住み着いている。同様の火災が起きないよう、短期間で何が出来るかを知るために、不法占拠されている建物の実情調査を行う」と語った。
4月30日よりサンパウロ市の自宅にいたテメル大統領も、1日に現地を視察したが、現場周辺の人々は罵声を浴びせ、物を投げつける人まで現れた。警備員に囲まれ、早々に立ち去った大統領は、「(焼け落ちたビルは連邦政府の所有物だったが)占拠している人々があまりにも貧しいため、強制立ち退きを求める事は出来なかった。今後は住処を失った人々への援助策がとられる」とした。
1日の火災でビルから逃げた人の多くは、そのまま外で一夜を明かした。寒さに震えて寝ている内に盗難に遭った人や、「自分は路上生活者ではない。ちゃんとしたところに住みたい」と、サンパウロ市の案内する路上生活者保護センターに行くことを拒否する人もいた。