【既報関連】ブラジルから米国に輸出される鉄鋼製品に輸出量制限が半ば一方的に課せられたと、3日付ブラジル各紙が報じている。これは今年の3月初めに米国トランプ大統領が、「鉄鋼、アルミ製品の関税を大幅にアップさせる」と世界に向けて一方的に宣言した後、ブラジル、米国両政府間で行われた交渉の結果だ。
ブラジルは、米国から「4月いっぱいまでは関税をかけない」と猶予を引き出し、粘り強く交渉を続けてきたが、期限の終わり間際に、米国商務省から「輸出量制限を受け入れるか、鉄鋼25%、アルミニウム10%の関税を受け入れるか、どちらか」との最後通告が入った。
ブラジルは2015~17年の平均で、鉄鋼半製品を350万トン、完成品は68万7千トンを米国に輸出していた。昨年は半製品、完成品を合わせた対米鉄鋼輸出により、25億ドルの収益を上げていた。
米国は、半製品の対米輸出量を15~17年の平均から7・4%削減の320万トン、完成品の輸出量も15~17年の平均から最大60%削減の27万4800トンに制限しようとしている。
政府は、15、16年の対米鉄鋼製品輸出実績は17年よりも低かったため、15~17年の平均輸出量を基準に決めるのではなく、17年の数値だけを基準にするよう要請していた。
ブラジル鉄鋼協会(IABr)のマルコ・ポーロ・ロペス会長は、「この決定は最悪というわけでもない。『受け入れるか、さもなくば高関税だ(米国市場から出て行くなら出て行け)』と言われたに等しいのだから」と語り、現在のブラジル国内の鉄鋼製品生産工場の稼働率は68%だから、ともかく輸出の枠をキープして、生産を続ける事が肝要との立場をとった。
「米国は、『これは大統領の決定だ。米国内政治の風向きが変わり、これ以上の交渉はない』と言っている」と、ロペスIABr会長は語った。
ブラジル政府は、「交渉が打ち切られた事を遺憾に思うと同時に、両国間にとって妥当な解決策を構築する用意がある事を改めて示す」との書面を発表し、輸出制限量は一方的に決められたもので、ブラジルは同意していないとしている。
ブラジル政府は、「アルミニウム業界は10%の関税を受け入れた」としているが、ブラジルアルミニウム業界協会(Abal)のミルトン・レゴ会長はこれを否定している。
同会長は「関税は輸出量制限ほど酷くはない」と微妙な言い回しをしつつ、「米国はアルミニウムに関しては交渉期限を延長してきたので、可能な限り交渉の行方を待ちたい」と語った。