【既報関連】自国通貨ペソの急激な下落に見舞われているアルゼンチンが8日、国際通貨基金(IMF)に推定300億ドル以上の融資を要請したと、9、10日付ブラジル各紙が報じた。
この金額は、アルゼンチンが持っている外貨準備高の50%以上とも言われている。演説の中でマクリ大統領は、通貨危機を招いた責任はキルチネル前大統領にあると主張。あくまで自身の経済政策、ソフトランディング手法の正当性を強調した。これは「国内の経営体力の弱い産業を保護しつつ、経済成長も諦めることなく、前任者の残した負の遺産の解消を目指す」というものだ。しかしながら、マクリ大統領は「これはIMFからの融資が受けられるかどうかによる」とも語っている。
一方、IMFのラガルド専務理事は、「アルゼンチン経済建て直しのため、どのように施策を進めていけばよいかの共同協議が始まっている」と語った。
マクリ大統領による融資要請発表の翌日には、アルゼンチンのニコラス・ドゥジョヴネ財相とIMFのアレハンドロ・ウェルネル西半球局長が、米国ワシントンDCのIMF本部で会合を行った。アルゼンチン財務省は会談後、「交渉は6週間後を目処にまとまるだろう」との声明を発表した。
ドゥジョヴネ財相は10日も、ラガルド専務理事や米国のデヴィッド・マルパス財務次官と会談した。IMFは、加盟国の経済状況が悪化した際や通貨が激しく下落した際には融資を行い、国際経済の安定に寄与している。米国はIMFに最も多く出資していて、議決権も最大のため、融資を受ける際には米国の理解が欠かせない。
アルゼンチンは、融資を受けられたとしても、例外的なスタンドバイ取極(とりきめ)という形式になりそうだ。通常のスタンドバイ取極では、各国のIMFへの出資額(アルゼンチンの場合45億ドル)に応じて融資額が決まるが、例外的スタンドバイ取極なら出資額の何倍もの融資を受けられる。ただ、この場合の監査は厳しく、返済金利も高くなる。
元IMF財務局長のテレサ・テルミナシアン氏は、アルゼンチン・ペソ急落の背景には、アルゼンチン人が為替変動に極めて敏感に反応する性質があると見ており、マクリ大統領のソフトランディング手法についても、「方向性としては間違っていないが、市場はそれでは不十分だと見ている」と評価した。
アルゼンチン・ペソは、4月26日の1ドル=20・2ペソ以降、急激に下落。アルゼンチン政府は4月27日、5月3、4日と緊急で大幅利上げを行い、政策金利を年40%に引き上げたが、5月8日には1ドル=23・07ペソと、12%の下落を記録した。
ブラジリア時間10日午後3時半現在の為替は1ドル=22・69ペソで、同国中銀の介入などにより、若干、値を戻している。