ブラジル国税庁は、会計犯罪や税制犯罪の捜査経験が豊富な、150人の監査員からなるエリート捜査班を結成し、三権全てにまたがる、800人の公務員の財政状況を監査し始めたと、11日付現地紙が報じた。
国税庁はこれまでに、何らかの不正が疑われるデータがある公務員20万人に関する調査を行っており、不正関与の可能性の強い公務員を800人まで絞り込んだ。今回結成された捜査班は、これら800人のデータを精査することで、今月末までに、犯罪行為に関与した人物や役職、犯罪行為の大要を把握し、新たなオペレーションの対象者を絞り込む意向だ。
新たな作戦の対象となる人物は約50人となる見込みで、その中には議員、州政府高官、判事、検事、会計監査員などが含まれている。その嫌疑は、資金洗浄、贈収賄、資産隠し、脱税など様々で、国税庁の管轄外の犯罪行為の手がかりが浮上した場合は、検察庁や連警に引き継がれる。
国税庁副長官で監査部門担当のイアガロ・マルチンス氏は、「特捜班結成」会見の席上、「国税庁には〃不逮捕特権〃は存在しない」と、最近政界、司法界で話題になっている言葉を使って、意気込みを語った。同副長官は、検察庁や連警との共同作戦で培った捜査の経験を大いに活用する意向だ。
国税庁はこれまでも、連警、検察と共同で行った、汚職捜査のラヴァ・ジャット作戦やゼロテス作戦などだけで、3千件を超す捜査の突破口を開き、追徴課税や罰金、滞納利息の取立てで、147億レアルを取り戻している。
国税庁はこれまでの調査から、税制犯罪の多くは、他人名義や架空名義の口座を使った資産隠しや、横領した公金の資金洗浄の形で行われていることを把握している。
特捜班は国税庁が持っているデータバンクの情報を洗い直し、不正関与が疑われる公務員とその家族、友人、関わりのある法人名義の口座に至るまでの出入金、不動産売買、契約行為、クレジット取引などの記録を精査する。国税庁監査部総合コーディネーターのフラヴィオ・カンポス氏は、「ターゲットとその周辺の人物の不審な金の動きを見つける。それは様々な犯罪の証拠や手がかりとなる」とした。
しかし、ブラジルの法律では、不正蓄財や所得隠し、脱税行為の場合は、罰金や支払うべきだった税金を払うよう命じられるだけで、刑事罰には問われないため、マルチンス副長官は「ブラジル国税庁にも、他の国のように、口座凍結なども行えるような権限が必要だ」と語った。
税制部門専門の弁護士エリザベス・リベルトゥシ氏も、「公務員に対する監査がこれまで緩かったことの方が逆に不思議だ。今回の動きは非常に効果的。公務員は油断しており、私企業などが慎重に資産隠しなどをしているような対策は採っていないのではないか」と、国税庁エリート捜査班結成を評価している。