ロシアW杯開幕をちょうど一カ月後に控えた5月14日に、ロシア行きの切符をつかんだブラジル代表23人が発表された。才能にあふれた選手を数多く輩出するサッカー王国ブラジルは、すべての国民が完全に満足する選出はありえない。今回も、「あの選手が選ばれないなんておかしい」という不満の声がチラホラサッカーファンの間で漏れ聞こえてくる。
今回選出された23人の内、19人に関しては妥当と判断されたのか、不満の声はあがっていない。少数ながら選出に疑問の声が目立つのは、MFフレッジとタイソン(共にシャフタール・ドネツク)、GKカッシオと右SBのファギネル〈共にコリンチャンス〉の4人だ。
フレッジとタイソンの所属するシャフタールは今季の欧州チャンピオンズ・リーグでもベスト16に残った強豪だが、ウクライナのリーグ戦がブラジルでテレビ中継されることがないことから、「そんな奴知らない」という反応も少なくない。
多くのサッカーファンから代案としてあげられていたのが、フレッジの代わりにアルトゥール(グレミオ)、タイソンの代わりにルーカス・パケタ(フラメンゴ)という、国内の有望な若手選手だった。とりわけアルトゥールに関して言えば、昨年のブラジル全国選手権で最優秀新人選手に輝き、2019年以降のFCバルセロナへの移籍も内定しており、評判の高い選手だ。
ミッドフィールダーにはジュリアーノ(フェネルバフチェ)、タリスカ(ベシクタシュ)といったトルコリーグで活躍する選手も候補にあげられていたが、トルコリーグもブラジルでテレビ放映されず、なじみがない選手よりは、国内最大の人気チーム、フラメンゴのパケタの将来性に賭けたいということか。パケタはルックスも良く、若手女優やラップ歌手との交際でも話題となるなど、女性からの人気も高い。
また、カッシオとファギネルのコリンチャンス勢に対しては、「監督のチッチが、代表の前はコリンチャンスの監督だったせいで、贔屓されている」というのだ。
今回の選出ではカッシオとファギネルに加え、2012年にコリンチャンスがクラブW杯で優勝したときにレギュラーだったMFパウリーニョ(FCバルセロナ)と、2015年のブラジル全国選手権制覇の際、ゲームメーカーとしてコリンチャンスを引っ張ったレナト・アウグスト(北京国安)も選ばれている。
「コリンチャンス贔屓」に反感を持っているのが、昨年リベルタドーレス杯で優勝したグレミオのファンだ。グレミオからはセンターバックでジェロメルが選ばれたが、前述のアルトゥールに加え、「昨年の南米最優秀選手のルアン(攻撃的MF・リオ五輪金メダルメンバー)を差しおいてタイソン?」「カッシオよりマルセロ・グローエの方が遥かに優れたキーパーなのに」と、不満が収まらない様子。
また、コリンチャンスファンからも「タイソンなんかを選ぶなら、ロドリギーニョを選んでほしかった」という声が目立っていた。
選出メンバーのほとんどが欧州の強豪クラブ所属なのは今回のロシア大会に限ったことではないが、国内リーグからの選出は23人中3人だった。ふだん地元チームを最優先で応援するブラジル人にとっては、もっと身近な名前が聞きたいのが本音か。