21日付けエスタード・デ・サンパウロ紙の第1面には、グアルーリョス国際空港で家族と分かれるデカセギの写真が大々的にトップ掲載され、訪日就労者のビザ取得数が増加しているとサンパウロ市地域面1ページを丸々割いて報じられた。「デカセギ向けビザ145%増加、日本移住の新しい波。仕事、良い生活、治安が中心的動機」と紹介され、当地の経済危機にあえぎ、人材不足が騒がれる日本へ向う再度の大波が起きている様子が描かれている。
同記事によれば、在サンパウロ日本国総領事館で2014年から16年までの2年間に、デカセギ向けのビザは145%増加。発給数は13年に約3500件、14年に約4600件、15年に約8100件、16年には約1万1500人と、最盛期の08年の約1万3600件を彷彿とさせる1万件の大台超えを記録した。
滞日ブラジル人人口も2015年の約17万3400で底を叩き、16年に約18万900人、17年に約19万1300人とビザ同様に1万人ずつ増える勢いとなった。
《現在は三世までだが、7月からは四世ビザが始まる。新しいビザの許可は、若い世代が日本語教育に関心を高めるなど、新しい人流を刺激する役割を果たしている》と同記事は分析する。訪日機運をあおるかのように《やる気のある人には仕事はいくらでもある。時給48・60レアル(約1400円)を稼げる》とも紹介した。
さらに《1990年代は単に仕事を求めて訪日していたが、現在の動機はもっと重い。派遣会社イコウ・ジャパンのマツイ・ヴァネッサさんは「ブラジルの治安問題のために日本に行く人も多い」とコメントした》とも。
サカイ・カチアさん(37、三世)は思春期まで日本に住んでいたが、04年に帰国。現在の夫と知り合い、零細企業を起こしたが、政界汚職などの問題で不況が深まった影響を受け、経営が難しくなった。会社を閉め、二人の子供と犬を連れて年末に再訪日しようと考えている。いわく「日本では好きな時間に、手に携帯電話を持って外をぶらぶらできる。日本でお金を貯めて起業したい」との夢まで。
ただし、武蔵大学のイシ・アンジェロ教授は「昔に比べ、日系ブラジル人を雇用する利点が減っている。他のアジア人労働者を雇用した方が安くすむようになった」と警告し、ブラジル人労働者が工場を席巻した90年代とは状況が違うと釘を刺している。
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エスタード紙21日付けには、《”Gueto” Tupiniquim tem até Arraial(ブラジル人ゲットーにはアライアル(田舎ダンス)まで)》という関連記事も。日本最多のブラジル人人口5万300人を誇る愛知県の在日コミュニティでは、ブラジル文化を伝える努力が行なわれていると報道された。豊橋ブラジル協会で日本語教師をする鈴木ギダさんは、「日本語を少しでも習得してから訪日して欲しい」と警告。在日ブラジル人子弟にはブラジル文化やポ語知識が乏しいことを指摘し、「子供達のルーツを忘れさせないようにしてほしい。私達は彼らの持つアイデンティティを心配している」とのこと。ブラジル文化を継承することも大事だが、もう一つの選択肢も。逆に日本に帰化する基準をより簡易にし、在日二世らが積極的に「日本人」になってくれれば、日本の人口減対策にも寄与するかも?!