【既報関連】10月7日の大統領選まで4カ月余り、今年いっぱいまでの任期終了まで7カ月弱。テメル政権はもはや延命に汲々としており、「任期いっぱいは改革の道を諦めない」との方針は到底、維持できない状態にいる。
求心力は落ち、連立与党からも見放されたテメル政権は、5月21日からのトラック運転手ストでも運転手側に大幅に譲歩しただけでなく、4月にエドゥアルド・グアルジア財相と策定した優先経済課題の実現も困難な状況にあると、3日付現地紙が報じた。
政府が最も強く実現を望んでいながら、実現の見込みが最も低くなった計画に、電力公社エレトロブラス社の民営化がある。
最近6年間の赤字総額が280億レアルにまで膨らんだエレトロブラス。その民営化案は1月22日に提出されたが、審議は下院の特別委員会で止まっている。
財務省内の経済政策スタッフの間では「年内のエレトロブラス民営化実現は無理」との空気が漂っており、ロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)も、非公式に「選挙前のエレトロブラス民営化採決は困難」との意向を示している。
財省スタッフが、議会通過は比較的容易ではと予測する、カダストロ・ポジチーボ(債務返済の滞りのない優良債務者への金利優遇策)でさえ、議会審議が止まっているのが実情だ。
2020年末までの期限付きで付与されていた「社会保障費納入優遇措置(デゾネラソン)の撤廃」(レオネラソン)だけは、トラックストのせいでディーゼル価格を急遽引き下げざるを得ず、そのための財源ということで、渋々認めざるを得なかった有様だ。大統領の拒否権行使で、レオネラソン対象となる産業分野が28から39に増えた事を不満に思っている議員も多い。
予測を大きく下回る景気回復、鉄鋼関税や食肉輸入制限、米国の利上げ観測が引き起こすレアル安、燻り続ける第3の大統領告発の恐れ、雇用状況の改善の遅れなど、年明け以降、テメル大統領の頭痛の種は増える一方だった。そこにトラックストが追い討ちをかけ、1~4月の累積上昇率が10%を超えていた株価も、1カ月で元に戻ってしまった。経済関係者たちの間では、今年のGDP成長率は1・5%を下回るだろうとの声さえ聞こえてくる。
マイア下院議長は、「今年は選挙がある上、政府は疲弊している。諸政策の議会承認が難航するのは当然のことだが、我々も出来る努力は続けていく」と語るのが精一杯だ。