米国政府は5月末に、ブラジルの鉄鋼製品には輸入量制限(クォータ)を、アルミニウム製品には関税10%を課すと決め、1日に書面で正式発表したと、2日付ブラジル紙が報じた。
ブラジルの産業貿易サービス省(Mdic)発表の文書には、クォータは2015~17年の平均輸出量を基準に決められ、鉄鋼半製品は同期間の平均輸出量と同量の350万トン、鉄鋼完成品は平均輸出量の70%の54万3千トンに定められたと記されている。
Mdicの書面は、「『輸出量制限の制定は不当である』とのブラジル政府の立場は変わっておらず、ブラジル・アメリカ両国の鉄鋼、アルミニウム産業の期待と必要性の両方を満たしうる解決策構築に向けて、ブラジルは開かれた姿勢を保ち続ける」と続き、国内鉄鋼生産部門と連絡をとり、輸出量制限の影響を注視し続ける意向であることを示した。
今年の3月に米国トランプ大統領が、鉄鋼、アルミ関税大幅増を発表して以来、対象諸国は個別に関税免除を求めた交渉を続けてきた。
ブラジルも、一旦は関税や輸出制限の適用を免れた後、時間を稼ぎ、交渉、説得を続けていた。
その結果、鉄鋼製品への25%の関税は回避できたが、アルミニウム製品への関税と、鉄鋼製品への輸出量制限が課されることとなった。
米国政府は5月31日、カナダ、メキシコ、EUに対しては、6月1日から、鉄鋼製品に25%、アルミニウム製品に10%の関税をかけることを表明した。この報にカナダ、メキシコ、EUは一斉に反発。報復措置を続々と発表し、貿易戦争に発展する懸念が高まっている。
国際通貨基金(IMF)は5月31日、「高関税のかけ合いに勝者はいない。貿易戦争が長引けば全ての国が痛みを受ける。IMFは関係各国に向けて、貿易の障壁を下げ、利害の不一致を解消させるため、共同で建設的な努力を行うことをここに呼びかける」と発表し、特に米国に、より建設的な方策をとるように求めた。
なお、既に具体的な品目も挙げて、対米輸入製品に報復関税をかけることを表明しているEUやメキシコとは対照的に、ブラジル政府はMdicによる形式的な文書の他は具体的な対策は打ち出しておらず、テメル大統領も同件に関するコメントを発表していない。