「県の駐在員を置くこと」
県人会を「母県の出先機関」と位置付けることを提案しておられるコロニアの方もおられる。このアイデアは、コストもそれほどかからず現実的で実現可能である。
なぜなら、①ブラジルには県などの補助金を得て県人会館を設置している県が30県以上あり、賃貸の事務所はどの県も所有している。
そのため借館料は不要で、人件費のみである。②やるべき仕事は多数ある。県の観光振興、県産品の輸出、県人会の活性化等々である。③さらに駐在員の派遣の場合は、県の国際化のための人材育成につながる。④駐在員は県から派遣してもいいし、日本語とポルトガル語の堪能なコロニアの人材を活用することも可能である。
このように2つの方法が考えられるが、県から人材を派遣する場合は、航空賃、人件費、アシスタント雇用費、住宅費、活動費等がかかるのでかなりの出費を余儀なくされよう。
しかし、コロニアの人材を駐在員として活用すれば、住宅手当も不要であり、1人で活動できるので、コストも大幅に削減できよう。このアイデアを実践する都道府県が出てくることを期待したい。
「日本県人会ビルデイングを建設すること」
大規模な日本人会館を建設するという提案をされる方もおられる。
一見荒唐無稽なことと思われる方が多いに違いないが、必ずしもそうではなく、多大なる困難が伴うが実現可能であると思われる。発想の転換という意味で考えていただきたい。
筆者のサンパウロ駐在時代にも大型の日本会館のような建設計画があったが、立ち消えになった。サンパウロには、ユダヤ人のコミュニティが作った「エブライカ・サンパウロ」というスポーツ施設もある5万4千米の施設がある。
また全世界に散らばる「シリア・レバノン会館」もある。日本の場合、県意識が強すぎることもあり、すべて県単位で何でもやろうとする傾向にある。
県の会館も老朽化していることもあり、それらを売却し、資金を集め、日本政府、県、進出企業等の支援も受けて、大きな施設を建設する。
県連や各県人会等もそこに事務所を構え、会議室、セミナールーム、展示場を備えた若者も訪れたい施設にするというアイデアである。
ジャパン・ハウスと競合するという方もおられるに違いないが、それぞれのコンセプトや目指すところが異なるので、一部は重複するとしても、それほどでもないと思われる。
従来、コロニアでは、この種のプロジェクトが出てきた場合、可能な限り日本政府や県の支援をあてにしようとする傾向にあった。このアイデアでは、老朽化した会館を売却し、建設資金の一部を自分たちの資金を捻出するところに新しい発想がある。資金、時間、進め方、県ファーストの考え方等で大きな反対、抵抗が予想されるが、検討に値するものと考える。
筆者のメキシコ駐在時代(1970年代半ば)に日墨学院の建設計画があり、政府(100万ドル=3億円)、日系コロニア(50万ドル=1億5千万円)、進出企業(150万ドル=4億5千万円)をそれぞれ拠出し、実現に至ったことを思い出す。
その昔のセラード開発計画のような「オールニッポン・プロジェクト」のような大事業の再来を期待したい。
筆者の考えをすべて紹介させていただいたが、日本人移住110周年記念を迎えて、2018年を新しい発想の年、更なる創意工夫の年、行動の年となれば、望外の喜びである。また、今後数多くの意見が出されることを期待したい。
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【参考資料】※県連及びホームページのある県人会のホームページから作成した2015年時点での「ブラジルにおける県人会の概要」表(5ページ)も参照のこと。入手希望者は、桜井まで(teisakurai@gmail.com)
※過去に筆者が執筆した連載エッセイ・レポート「ブラジルを理解するために」(日本ブラジル中央協会のホームページ)を参照のこと。
◎連載11 「ブラジル文化福祉」協会(文協)での人材育成セミナー」
◎連載67 「サンパウロ・ジャパン・ハウスのチャレンジ」
◎連載80 「フェスチヴァウ・ド・ジャポンのこと」
◎連載95 「ブラジルの州・市と日本の都道府県市町村との姉妹都市関係の特徴」
◎連載99 「日本の大学とブラジルの大学との留学交流」