【既報関連】米国の中銀にあたる連邦準備制度(FRB)は13日、3カ月ぶりに政策金利を年利1・75~2・0%へと引き上げた。これにより、翌14日はブラジル通貨レアルが更なる下落に苦しんだと、14、15日付ブラジル現地各紙が報じた。
これは今年2度目の利上げだ。「年内の利上げは計3回、つまり年内にもう1回」と見られていた利上げペースも、FRBが発表した文書では、利上げは年内で更に2回の計4回となる可能性が示唆された。年内で更に2回利上げされると、政策金利は「2・25~2・5%」となる可能性が高い。
米国の金利上昇は、ブラジル、アルゼンチン、インド、トルコなど、新興国通貨の値下がりとそれらの国からの投資資金流出を招く可能性を高める。ブラジルでは、米国の金利上昇の話が出始めた2月以降、外国投資の逆流が始まり、5月には史上最高となる84億3千ドルの外国投資流出を見た。今年1~5月の外国投資収支は、60億6千万ドルの赤字だ。
ブラジルの場合、13日の利上げ前も、7日の時点で1ドル=3・9レを記録。ブラジル中銀のイラン・ゴールドファジン総裁は同日、通貨スワップで市場介入した上、大幅なレアル買いの市場介入を行う意向も表明した。その効果もあり、8日~13日の為替は1ドル=3・75レ以下に下がった。
だが、13日に「米国が政策金利引き上げ」、「利上げペースも加速」の報が走ると、翌14日は、前日比2・65%ドル高の1ドル=3・81ドルを記録した。
ブラジル中銀は14日も、一日の為替介入オペレーションとしては最大規模となる50億ドルの通貨スワップを行ったが、ドル高は止められず、来週にかけてさらに100億ドルのスワップを行うことを発表した。
ブラジルの金融関係者の間では、「レアル安を食い止めるために、ブラジルも政策金利(Selic)引き上げを行うのでは」との予測も出ている。実際に、深刻な通貨危機に苦しむアルゼンチンの政策金利は40%で世界最高だ。
一方、16年10月以降、Selicを段階的に年利6・5%にまで下げてきた事の背景には、「景気活性化」の大命題がある。それが進まないままに上げるのは矛盾するとの声や、「米国利上げで米ドル高」なら「ブラジル利上げでレアル高」のような単純な話ではないとの声も出ている。
ブラジル中銀のゴールドファジン総裁はレアル防衛のための利上げには否定的だが、現地紙からは利上げの噂や利上げ観測の声が消えない中、来週19、20日に通貨政策委員会(Copom)を迎える。