国内の製糖業界やエタノール業界の反対を押しきり、上院本会議は19日、液体エタノールを精製工場からガソリンスタンドなどの販売店へ直接販売する法案を賛成47、反対2で承認したと、20日付現地各紙が報じた。同法案は今後、下院での審議に移る。
この決定により、エタノール供給チェーンから外された格好の配給業者を束ねる全国燃料・潤滑油配給業者組合(Plural)や、サトウキビ加工業者連合(Unica)、パラナ州生物エネルギー生産者協会(Alcopar)などは、販売コストが高くなり、製品の質も下がるとして反対している。
逆に、サトウキビ農家を束ね、ブラジル北東部に強い影響力を持つサトウキビ栽培業者連盟(Feplana)は上院の決定に賛成している。同連盟のアレシャンドレ・リマ会長は、「消費者に恩恵がある」と語っている。
政府は「この措置で消費者価格が下がる可能性がある」とはしつつも、既存の配給業者を通さずに流通させる事で、脱税や、エタノールへの異物混入などが起こる可能性を危惧している。
この法案は、先月起きたトラックストで国内の燃料流通が大混乱をきたした際に、オットー・アレンカール上議(社会民主党・PSD)が提出したものだ。同法案は緊急扱いで、委員会審議などを経ずに上院本会議採決に持ち込まれていた。
ストの最中は、国家原油庁(ANP)も緊急措置として、工場から販売店へのエタノール直売を認めていたが、スト正常化と共にこの措置は廃止されていた。
19日ロナウド・カイアード上議(民主党・DEM)は、もはや、5月末のような緊急事態ではないとし、公聴会など、通常の法案審議手続きを踏みなおすことを提案した。これには民主運動(MDB)上院リーダーも賛同したが、MDBのエウニシオ・オリヴェイラ議長は採決を行った。
アレンカール上議は、エタノールは寡占状態にあると断じ、「〃濡れ手に粟〃の寡占業者に手を入れる」と発言。配給業者の関与を排除し、自由競争を促進することで、消費者価格は下がるはずだと主張している。