22日、W杯でのブラジル代表第2戦後、座り込んで泣くネイマールの姿が見られた。終了間際の追加時間に今大会初得点を挙げ、チームとしても初勝利。肩の荷を少しは下したはずのエースの姿を見、高校生の頃流行った漫画に「10人に勝ったら11人分、100人に勝てば101人分努力しなければならない」とあったのを思い出した▼一次リーグの生き残りがかかる試合、彼は常になく荒いプレーを見せ、苛立ちも顕にした。初戦は引き分け、試合中受けた10回のファール故か、直後の練習は足の痛みで早退。気分転換のためか髪型も変えた。メディアから散々非難され、第2戦でも何度かチャンスを逃した後の得点と勝利だっただけに、様々な感情が噴出しても当然だ。まして、術後の回復のための時間もなく迎えたW杯。重圧は相当だったはずだ▼だから、監督や同僚達は皆、彼を庇う発言を繰り返した。だが、メディアは「国民は彼が暴言を吐き、相手チームの選手の顔を平手打ちした事よりも、彼が泣いた事に顔をしかめている」などと書きたてた。著名選手故の期待で重圧を感じていたのはアルゼンチンのメッシも同じで、同国のメディアも色々書きたてたはずだ。だが、彼が初得点を挙げたのは90分内だった事もあり、通常通りプレーした▼他者より優れた者と認められ、期待される事でかかる重圧は経営者などでも同じだ。松下幸之助氏は、業績が出ないと嘆く部下を「血の小便が出るほど努力したか」と叱責している。人間なら泣きたい時があるのは当然だ。だが、選ばれた一握りのエリート達には、悩みや弱さを乗り越えて前進する姿を見せて欲しいと願うのは応援者の常でもある。(み)