日本人環境芸術家の豊田豊さんによる個展『豊田豊―O Ritmo do Espaço(空間律動)』の開会式が先月23日午後、アルマンド・アルヴァレス・デ・ペンテアード伯現代美術館(MAB-FAAP)で行なわれ、関係者など約80人が参加した。同個展はブラジル日本移民110周年を記念したもの。1965年から今日までの作品80点が展示され、豊田さんの作家活動の回顧展としても発表された。
式典には同館の作品収集家であるラウラ・スザナ・ロドリゲスさん、菊地義治移民110周年記念式典実行委員長、同展キュレーターの技術評論家のデニーゼ・マタールさんらが参加。展覧会の開催に祝辞を述べた。
会場内には豊田さんの生誕から現在までの歩みを辿る年表を設置。1969年にサンパウロ・ビエナウに初出展した際の邦字紙記事やパンフレット等も展示された。
豊田さんは1958年の渡伯時の景色を思い出し、「サトウキビ畑の緑と空の青の2色が目の前に広がっていた。その景色を見たとき、風景画を描く気分にはならず、自分が立つ宇宙空間というものを表現しようと思った」と振返った。
豊田さんにとって、宇宙とは「光と影、女性と男性、+-のように2つの相反する物がある」という。
同展ではサンパウロ・ビエナウでの出展作品『暗い部屋(Quarto Escuro)』を展示。暗室に吊るされた球体と立方体が照らされ、左右の壁に両物体の模様が映し出される作品だ。豊田さんは「ポジチヴォの物体が照らされ、ネガチヴォというポジチヴォと相反するものの影が映し出される」と同作品で表現したことを説明した。
会場内でも特に目立つのが高さ5メートル、横8メートルもの大きさの新作「宇宙空間」。地面にも鏡面仕上げのステンレスが敷かれ、作品に映った風景の上下が入れ替わるという不思議な作品だ。同作について「60年の作家生活を経て、今は渡伯当時の『原点』に立ち返る作品制作への希望に燃えている。今回の新作はその1点目だ」と思いを語った。
来場していた曹洞宗南米佛心寺の采川道昭総監(69、青森)は「普段意識して見ることができない『陰』の部分を可視化した豊田さんの作品は興味深い」と評価した。また、エンジニアとして働いていた西山アレックスさん(53、二世)は「とても精密な作品で、綿密に計画して作られたのでは。エンジニアの目線でも驚くような素晴らしいものばかり」と賞賛した。
同展は、9月2日まで。開館時間は平日(火曜休館)が午前10時から午後7時、土日祝日は午前10時から午後6時まで。入場は閉館の1時間前まで。