【プロミッソン発=大澤航平記者】「本当にここが、いつもの上塚先生の運動場なんですか。へえー。こんな景色は見たことがありません」――。幼少時、上塚周平翁から「がんばれよ」と託された言葉を大切に心に秘め、約一世紀の間、プロミッソンを見守ってきた安永忠邦さん(97、二世)。彼にとって、眞子さまを迎えて二万人もの訪問客が訪れた大祭典は感動の連続だった。
忠邦さんは当日、午前8時過ぎには「光明観音堂」の前にすっくとたち、午後6時ご到着予定の眞子さまを待ち始めた。記者が年齢を心配して「座って待ったらどうですか?」と促すと、「眞子さまが来られたら、お供えされるお花をお渡しするんです」と表情を引き締めて一言。皇室への並々ならぬ敬意を感じさせる一言だ。
実際に眞子さまがご到着され、緊張した面持ちで忠邦さんがお花を渡すと、眞子さまに続き、深々と頭を垂れて先人に祈りを捧げた。
眞子さまはお忙しい合間を縫って、忠邦さんに話しかけられ、「上塚周平さんのご生前をご存知なのですか」とお尋ねになったという。どのような会話が実際に取り交わされたかを知るのは、眞子さまと忠邦さんのお二人のみ。
忠邦さんに「どう答えたのですか」を聞くと、いつもの上塚周平翁の晩年の逸話を滔々と語りはじめ、「入植者のことをいつも気にかけ、清貧の人でありました。それが移民の父と呼ばれる所以です」と結んだ。おそらく眞子さまも、その説明をお聞きになったに違いない。
嵐のように一日が過ぎ去った後、忠邦さんに感想を尋ねると、「本当に短い一日でした」――。そして「これが人生で本当に最後。眞子さまに上塚先生の植民地を見て頂き、生涯で最高の一日でした」と朗らかな様子を浮かべ、その目には涙が光っていた。