ブラジル国家通貨審議会(CMN)は7月31日に、勤続期間保障基金(FGTS)からの住宅購入資金融資枠の上限を、これまでの「連邦直轄区、ミナス、リオ、サンパウロ州内では最大95万レアルの物件まで、他の州では80万レアルの物件まで」から、「全国一律150万レアルまで」に変更したと、1日付現地各紙が報じた。
施行は来年の1月からで、6年間で8千億レアルの資金が建設業界に流れると試算されている。連邦貯蓄銀行(CAIXA・FGTS資金を管理している公的銀行)は同日、法人向け不動産ローンの金利も下げた。
10月の統一選まで2カ月少々となった今、政府の目的は、建設業界の活性化だ。建設業界の国内総生産(GDP)は昨年、諸業界の中で最大の5%ダウンを記録した。建設業界の活動が落ち込んだことで、昨年は雇用が減り、不動産ローンの総額も落ち込んだ。
一般消費者が不動産を購入する際の低金利、長期返済システム(住宅金融システム・SFH)の上限も、150万レアルまでに引き上げられる。
SFHは、個人不動産ローンの大半に関わっている。原資は、正規労働者の退職金のために企業が毎月積み立てるFGTSや、貯蓄預金(ポウパンサ)だ。FGTSの積み立てが貯まっている消費者は、FGTSの口座を使ってSFHの返済を行うことも可能だ。
CMNはまた、各銀行が集めたポウパンサ預金を不動産融資に回す規定の簡素化も決定した。
各銀行にはこれまで、ポウパンサの65%を不動産ローンで運用することと、さらにその80%はSFHとして扱わなければならないことが義務付けられていた。新たな基準では、不動産ローンでの運用義務こそ残るものの、「80%をSFHに回す義務」は消失し、金利規定もなくなる。
中銀のオタヴィオ・ダマーゾ規制関係部長は、「金融機関は、『参考金利プラス12%』の利率よりもずっと低い金利で融資しており、市場にも利率上昇の材料はない」と語る。
ブラジル建設業界協議所(CBIC)のジョゼ・カルロス・マルチンス所長も、「より多くの資金が建設業界に流れるようになるだろう」と語る一方で、施行されるまでの間は、現在の上限と新たな上限との間に位置する物件の販売が落ち込む可能性も指摘した。
ただし、現地紙は、「FGTSの融資が受けられる物件の価格上限が95万レアルから150万レアルに引き上げられても、サンパウロ市で恩恵を受ける物件は全体の13%に過ぎない」とも分析している。