サンパウロ市の広島文化センター(平崎靖之会長)で7月24日午後、広島日伯協会の田中竜二事務局長による講演会「西日本豪雨災害」が行われた。約20人の県人らが集まり、質疑応答では各自の故郷の被害状況を質問するなど心配する声が相次いだ。
田中事務局長(54、広島市)は広島市安芸区や同市安佐北区白木町、呉市など甚大な被害を受けた場所の被災状況を説明した。「国道寸断や土砂崩れで通れない道路も。入れない場所はドローンで調査を進めている」とのことだ。
また12日には土砂をせき止めるための砂防ダムが決壊したり、東広島市のため池にも決壊の恐れがあると報じられた。田中事務局長は「2014年の広島土砂災害を省みて、ハザードマップをつくっても犠牲者が出るなど対応しきれなかった」と語った。
呉市などでは道路の寸断により何キロもの渋滞が2日間も続いたり、水道が止まったという。
田中理事長は被害の原因の一つを「広島の地質や地形」を説明した。「広島市の地質は花崗岩が風化してできた真砂土でできており、昔から地盤がゆるく、地下鉄を作るのも遅れた。また傾斜が多い山地でもあり、土砂が木と一緒に流れてくる」と述べ、土砂災害などの水害が起こりやすいという。
災害により自宅に住めない人は地域の公民館や学校の体育館で過ごしている。県営・市営アパートの空き部屋にはくじ引きで当たった人が入るそうだ。高校野球の広島大会は全国から10日遅れの14日に開幕した。さらに広島では40度近い猛暑が続いており、ボランティアが熱中症で倒れることもあるそう。
19日には在名古屋ブラジル総領事館から副領事と補佐官2人が精神科医を連れ、在日ブラジル人が多く住む安芸区へ。精神保健ケアや行政関係の手続きなどの仲介に入った。
田中事務局長は「知事や議員は各地域に泊まりこみで対応している。ブラジルには来られないが『よろしくお伝えください』とのことだった」と語り、被害状況についての説明を終えた。
その後、同協会の歴史や活動を報告、質疑応答となった。平崎会長からは義援金について「講演を聞いた皆様から周囲に広く知らせて欲しい。集まった義援金は1、2ヵ月後にまとめて送りたい。皆さんご協力よろしくお願いいたします」と呼びかけた。日本祭りの2日間で集まった総額も発表され、971・20レアルだった。
同県人会が開設した特別口座の振込先は以下の通り。《CENTRO CULTURAL HIROSHIMA DO BRASIL, CNPJ 47.851.779/0001-12, BANCO SANTANDER (033), Agencia – 4551 – Rua Galvao Bueno, 31, C/C – 000130 03986 5》
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西日本豪雨災害について講演した田中竜二日伯交流協会理事長は「ご年配の方に多かったが、過去の経験か『らうちの家は大丈夫だ』と逃げ遅れ、亡くなった方が多い。どこかの地域ではコミュニケーションがとれた小さな町の中では避難がきちんとできた。緊急時は『大丈夫』ではなくしっかり避難を」と注意を述べた。また、講演に出席していたブラジル訪問中の山戸邦子さん(43、広島市)は「SNS(ヘッジ・ソシアウ)が発達した今、SNSでボランティアを頼まれ、行ったものの人が入れる状況ではなかったということも。情報の扱いにも気をつけて」と語った。