6月14日に下院を通過して以来、国際的にも注目度の高かったアルゼンチン上院での妊娠中絶法案の審議が8日に行われ、16時間にも及ぶ審議の後、接戦となった投票で否決された。9日付ブラジル国内紙が報じている。
今回の妊娠中絶法の問題は、アルゼンチンではかなりの影響力のある人物まで巻きこんだ、国を2分するほど大きな議論となっていた。
同国出身のフランシスコ法王は「命の尊厳」を重んじる立場から強く反対。一方で、元大統領で現上議のクリスチーナ氏は、大統領だった時には反対していたものの、同国の多くの女性たちが抗議行動で強く中絶合法を求める姿を見て意見を変えた。こうした議論が、8日の上院審議の前から飛び交っていた。
8日に行われた審議は16時間にも及び、賛成と反対を巡り、熱い議論が繰り返された。下院での投票結果も129対125と大接戦だったが、それは上院でも同様だった。だが、かねてから、上院は「より保守的だから承認は難しいだろう」と予想されていた通り、38対31(棄権2)で法案は却下された。
今回の問題は、とりわけ南米で、強い関心が持たれていた。南米はカトリックの影響が強く、現時点で中絶を完全に合法化した国はないが、完全禁止のベネズエラとボリビアを除く国々は、「条件付」での中絶が合法化されている。
たとえばブラジルでは「強姦による妊娠、妊婦の生死に関わる場合、胎児が無脳症の場合は、12週間以内」、アルゼンチンでは「強姦と妊婦の生死に関わる場合のみ、14週以内」に中絶が認められている。
だが今回、アルゼンチンで妊娠中絶を合法化する波が高まったのは、現状の法律で中絶が認められるケースでも、金銭的な理由で手術を受けられない女性が大半だという現実が存在しているからだ。今回上院が否決した法案には、「14週以内の妊娠合法化」と共に、手術や薬、予後の治療の費用を国が負担することも盛り込まれていた。
隣国アルゼンチンでの中絶論議はブラジルの女性たちにも影響を与え、「12週以内の中絶合法化」を最高裁に求める声も増えていた。カルメン・ルシア長官は「今後、慎重な審理が必要な問題」と認め、3、6の両日に同件に関する公聴会を開催した。アルゼンチン上院が投票を行った8日は、サンパウロ市のパウリスタ大通りやルーズベルト広場、リオ市中央部などで、中絶合法化を支持する集会や行進も行われた。
アルゼンチンのマクリ大統領は今月中にも、非合法中絶を認めるケースを増やすなどの代替案を議会に提出する意向だ。
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