ブラジル郷土民謡協会(斉藤美恵会長)が創立30周年を迎え、サンパウロ市の宮城県人会館で5日正午から記念式典を開催した。その前後に第30回全伯大会も行なわれた。一般財団法人日本郷土民謡協会からの慶祝使節団4人をはじめ、出演者やその家族らが来場して節目の日を祝った。慶祝使節団一行は祝辞や祝い金を贈ったほか、特別ショーで歌声を披露するなどし、祝いの場を盛り上げた。
式典は棈木(あべき)幸一さんによる開会挨拶ではじまり、日ブラジル歌を斉唱した。会場に集まった唄い手の朗々とした「君が代」が響き渡り、厳かな幕開けとなった。
挨拶に立った斉藤会長は「日本移民110周年と協会創立30周年、めでたい年になった」と喜びを見せ、「本大会は会員の奉仕と団結で開催できた。会員の協力に感謝したい」と労った。
慶祝使節団の日本郷土民謡協会事務局長・名誉教授の椿真二さん(72、北海道)は同協会理事長が転倒による怪我で来伯できなかった事情を説明し、当地の民謡界について「日本の伝統芸能が脈々と受け継がれている。行事準備でも若者が活躍しており、安心できる」と高く評価した。
その後、各地支部長やブラジル日本民謡協会の塩野彰会長らが挨拶を述べた。各表彰も行なわれ、当地での民謡普及活動を評価された北原民江副会長が椿事務局長から郷土民謡賞を受け取ったほか、斉藤会長が会員の小野綾さんらに功労賞を贈るなどした。さらに日本民謡協会と旅行会社アルファインテルから金一封が伯郷土民謡協会に手渡された。
式典後は特別ショーとなり、慶祝使節団の椿真代志(まさよし)公認教授、真次(まさじ)公認教授が歌声を披露し、小椋孝子公認教授が三味線で参加した。
木下節男太鼓グループも発表し、息の合った迫力ある太鼓に大きな拍手が贈られた。トリを飾った椿真二事務局長は「ソーラン節」を披露。椿事務局長の太く響く歌声に合わせて来場客も手拍子で参加し、会場全体が大いに盛り上がった。
総勢79人が参加したコンクールでは、ベテランの部に出場した八木静代さんが「佐渡おけさ」で優勝。11月に日本で行なわれる郷土民謡民舞全国大会に出場する。
慶祝団や大会参加者の発表を見ていた橋本真左子さん(65、二世)は「子どもの頃から親しんだ音楽が聞けて懐かしい。参観者がみな一所懸命民謡を楽しんでいる」と笑顔で語った。
大会進行などを手伝った西村昭子さん(二世、67)は、「うまい人が増えたように思う。私の娘は民謡にはまって日本の大学に留学中。そんな風に協会の活動を通し、民謡が好きになる人が増えたら」と今後の活動に期待した。
大会各部の優勝者は以下の通り(敬称略)。
▼幼少年の部=戸根ガブリエラ▼新人の部=ヴィトル・バルボーザ▼寿年の部=小田切マサエ▼高年の部=稲垣照子▼中年の部=武井静子▼ベテランの部=八木静代
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ブラジル郷土民謡協会の活動を支援し続けている下本八郎元サンパウロ州議も創立30周年記念式典に出席し、挨拶を述べた。下本さんは冗談を交えながら挨拶を述べ、同大会でブラジル、日本の順に国歌斉唱が行なわれたことに触れ、「ブラジルの式典に関する法律では総領事館など国関係の機関を除いて外国の国歌を先、ブラジル歌はあとに歌う。君が代を先に歌ってほしい」と釘を刺していた。日伯をつなぐ政治家らしく、両国の約束事に詳しい。同様にブラジルの行事では一般に、エライ人ほど最後に挨拶する。ほかの日系行事でも参考にしてみては?