ブラジル治安フォーラム(FBSP)が9日に発表したデータによると、ブラジルでは2017年に、過去最多となる6万3880人が殺された事がわかったと、10日付現地各紙が報じている。
1日平均175人、1時間に7人が殺された計算で、前年比3・7%増えた。年6万3880人の犠牲者は世界一で、人口10万人当たりの犠牲者(殺人発生率)30・8人/10万人(以下30・8人の形で表記)も、世界10位に入る。
また、この内5144人は、警察の手による殺人だった。1日平均では14人が死亡したことになり、16年比で20%増加した。
殺人発生率1位は68人のリオ・グランデ・ド・ノルテ州で、2386人が殺された。以下、アクレ州63・9人やセアラー州59・1人と続く。これらの州の殺人発生率は、16年の国別発生率で最高だった中米ホンジュラスの55人を上回っている。今年2月に連邦政府による治安部門直接統治が始まったリオ州の殺人発生率は40・4人で、11位だった。
殺人発生率が低かったのは、下から順にサンパウロ州(10・7人)、サンタカタリーナ州(16・5人)、連邦直轄区(18・2人)だ。
昨年は年明け早々、アマゾナス州やリオ・グランデ・ド・ノルテ州で大規模な刑務所暴動が起き、多数の死者も出た。
FBSPのレナト・デ・リマ会長は、「麻薬組織が縄張りや金を巡って堂々と抗争を繰り広げており、アクレ州やリオ・グランデ・ド・ノルテ州などの状況を悪化させている」と語る。2大麻薬組織の州都第一コマンド(PCC、本拠はサンパウロ州)とコマンド・ヴェルメーリョ(CV、本拠リオ州)が、およそ2年前に袂を分ち、対立が激しくなった事が原因だと、専門家は分析している。
また、不況の影響で各州が財政危機に陥って、警察機構の強化や保持のための資金枯渇や、装備の老朽化、人員不足を引き起こしていることも、治安悪化の要因に挙げられている。
解決策としては、諜報機関を強化し、麻薬組織を活動資金面から攻めることが挙げられる。リマ会長も、「重装備を見せ付けるような路上警備強化は経費ばかりかかり、結果が出ていない」と指摘している。
強姦事件や女性へ
の暴力事件も多発
また、強姦事件は6万18件(8・4%増)、マリア・ダ・ペーニャ法(妻や女性への暴力を取り締まる法律)の対象となる家庭内暴力も22万1238件(1日606件)起きた。専門家は、同種の犯罪は全てが警察に届けられてはおらず、実際の件数はずっと多いはずだとしている。
また、殺人事件の犠牲となった女性は4539人(6・1%増)で、内1133人は、女性であるが故に殺された女性殺人の犠牲者だった。女性殺人は、前年の929人比で22%増えている。