日本・メルコスール(南米南部共同市場)間の経済連携協定(EPA)交渉に、民間企業や日系社会からの注目が集まっている。今年7月、日本経済団体連合会(経団連)とブラジル全国工業連盟(CNI)が「第21回日本ブラジル経済合同委員会」を開催し、EPAの早期交渉開始を両国政府に働きかけるための共同研究報告書を採択した。メルコスール4カ国の日系進出企業からの注目も高まっているほか、ブラジル日本都道府県人会連合会(山田康夫会長)がEPAの早期交渉を求める嘆願書(本紙6面に掲載)を各県に郵送し、安倍晋三首相にも提出する予定だ。
ブラジル日本商工会議所の平田藤義事務局長は「日・メルコスール間のEPAの交渉に民間企業が注目している」と語った。同事務局長によると、13年の日本ブラジル経済合同委員会で日・ブラジル間のEPA締結を目指すことが決定され、昨年から日・メルコスールに形を変えて動き始めた。
昨年7月、パラナ州都クリチバで経団連とCNIの第20回目の会合が行なわれ、日・メルコスール間のEPA早期交渉を両国政府に働きかけるための「日本ブラジルEPAに関する共同研究報告書」(15年9月作成)の更新に合意。今年7月の会合でメルコスール4カ国の駐日大使出席のもと、更新された共同報告書「日本メルコスール経済連携協定へ向けたロードマップ」が採択された。
共同報告書には同商議所も進出日系企業の意識調査などで協力。4カ国の進出日系企業348社を対象に「日・メルコスール間EPAの必要性」についての調査を行い、84%が「必要性を感じる」と回答した。
平田事務局長は「この11月にはアルゼンチンでG20会合、来年6月には大阪でG20サミット。首脳レベルで話し合い、政治決断をする絶好のタイミング。それを後押しするため、進出企業など民間レベルの団結をしっかりつくりたい」と語った。
山田県連会長も日・メルコスール、日・ブラジル間のEPAの早期交渉についての嘆願書を、安倍首相など政府要人のほか各県に提出していると明かした。
「今年の日本祭りではJETROの発案で母県の特産品の市場調査を行った。県人会が特産品の輸入に関わる中、2国間の貿易障壁をなんとかしなければならないと思った」と振り返った。母県の特産品を販売・アピールをする県人会があるが、税関などの問題点を抱えているからだ。
嘆願書は7月から準備し、総領事館には渡した。外務省を通し、安倍首相、河村建夫衆院予算委員長、経済産業省、農林水産省らに渡される。ブラジルを訪問した岐阜県副知事、沖縄県知事や下地幹郎衆議には手渡され、残りの45都道府県には各県人会から郵送を予定。
山田会長は嘆願書について「我々がどう考えているかを各母県に知ってもらいたい。県人会は今までのようにボランティア的な交流活動だけではなく、経済的交流も必要になっていく。こういう動きにも協力していきたい」との考えを述べた。
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ウィキペディアによれば、EPAは《貿易の自由化に加え、投資、人の移動、知的財産の保護や競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の要素等を含む、幅広い経済関係の強化を目的とする協定》だ。貿易の障壁等の削減・撤廃に焦点をあてたFTAよりも、包括的な提携。今年2月に署名した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)もその一種で、7月には日本・EU経済連携協定も署名されたばかり。世界進出を進める中国は投資、人の移動、知的財産の保護などの分野で国内規制が厳しいという問題を抱えているために、この種の提携は難しいといわれる。逆に日本は積極的にこれをすすめることによって、商圏確保を狙っており、その一部にメルコスールも入れて欲しいという要望が上がっている訳だ。
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来社した商議所の平田事務局長、大久保企画戦略委員長によると、韓国とカナダはすでにメルコスールと交渉中だそう。また、大久保企画戦略委員長は9日夜にバンデイランテス局で行なわれた大統領討論会でジェラウド・アウキミン氏(民主社会党・PSDB)が日本との経済協力を求める発言をしたことを挙げ、ブラジルの日本への関心が高いことの証拠だとした。日本は日中韓東南アジアの東アジア地域包括的経済連携(RCEP)やEU・日間など様々な地域や国との経済連携を進めているため、対ブラジルはどうしても遅れがちとのことだが、どうにか南米との連携も進めて欲しいところ。